小泉純一郎講演(6)

(上から続く)
 話が逸れた。前向きな小泉さんの講演に戻そう。
ケネディ大統領が就任時に国民にむかって『あなたたちが国家に対し何ができるのか?』と問うた。あれは名演説だった。しかし同じことを今の首相が言ったら『馬鹿野郎』って言われそう(笑)」
 と、小泉さんもスッカラ菅を見放している。
オバマ大統領もこんなことを言った。『今、責任の時代だ。自分への責任、国家への責任、国際社会への責任』」
 日本は、上は首相から、下々は生活保護受給者まで「責任」を完全に放棄している。

 さて、ここからが今回の小泉講演の肝と言っていい。
憲政記念館に入ると正面に尾崎咢堂の像が立っている。第1回の衆議院議員選挙から連続21回当選、すべて勝ってきた。勤続60年。私なんて12回しか当選していない。とてもできることじゃない」
「その人が94歳で亡くなるのだが、亡くなる前に揮毫した額が記念館に掛かっている。なんて書いてあると思います。『人生の本舞台は常に将来にあり』と書いてある。94歳にして、まだ将来のことを考えている。今日、この講演会に90歳の人、来てますか。いないでしょ。だから皆さん、尾崎咢堂に比べればまだまだ若い(笑)。70歳ならまだ将来が24年もある。苦しい苦しいとへこたれるな。できることはある。へこたれない精神が大切だ」
佐藤一斎の言葉が好きだ。『少にして学べば、則ち壮にして為すことあり。壮にして学べば、則ち老いて衰えず。老いて学べば、則ち死して朽ちず』」
 小泉さんが、首相就任直後の衆議院で、佐藤一斎のこの言葉にふれた。この人、美濃国岩村出身であり、「言志四禄」を著した幕末の儒学者である。
 小泉さん、最後にこう言って講演を締めくくられた。
「苦しければ苦しいほど、自分に何ができるか考えよう」
 それがこの国を建て直すためにあなたたちがしなければならないことだ。舞台の袖に消える小泉さんの背中はそう語っていた。
 小泉さんを見送りながら、政治家とはかくありたいものだと思った。
                 (完)