モップヘアーと言われた人

 え?

《シニア右翼が増えた原因は「未成熟な戦後民主主義」にあり?このままでは再生産が繰り返される理由》

https://news.yahoo.co.jp/articles/80347aa7fc6343c105b88b5163ebef98c5f72e3f

 作家の百田尚樹さんに「モップヘアー」と愛称を付けられた、テレビでときおり顔を見る古谷経衡氏(以下、親しみを込めてモップくんと呼ぶ)がなんだか珍説を唱えている。突っ込みどころ満載なので、個々に指摘したい。

 まず、編集部が問いかける。

「なぜ中高年は極端に右寄りの情報に感化されやすいのだろうか?」

 この質問も「中高年」を大雑把に括りすぎなんだけど、答えるモップくんも、それを受けて大概なものとなっている。意味不明なところは省略するが、編集部のまとめでは、

《この20年間はネトウヨ界隈のトピックが途絶えることがなく、シニア層は過激に膨れあがる情報を盲信してしまった。不確かな情報に疑問を抱かないのは、戦後民主主義の未成熟に要因がある》

と答えている。

 おいお~い、一括りのシニア層、情報を妄信するシニア層って、朝日、毎日、東京新聞読者、「赤旗」読者、TBS、テレビ朝日、NHKを朝から晩まで見ているシニア層をどこかに置き去りにしてきちゃったのかな?ネトウヨ界隈のトピックを妄信するシニア層って、ごくわずかですよね。中高年パヨクのほうが圧倒的に多数です(近年、数は減っていますが)。

《『シニア右翼』を上梓した作家の古谷経衡氏は前提として、中高年のネットリテラシーの低さを指摘する。》

 ただ、モップくんが指摘する「中高年のネットリテラシーの低さ」については、ネトウヨとか右翼と限定しなければ、そのとおりだと思う。

 モップくんの次の発言を見てみたい。

《日本は戦後民主主義が未完で、うすぼんやりとしています。今のシニアは戦争を知らず、自分ごととして捉えたことがありません。だから『メディアが報じない大東亜戦争の真実』みたいな動画に咀嚼もせず飛びついてしまう。》

 うすぼんやりとした指摘だが、そもそも「民主主義」などというものが完成するとも思えない。さらに、「今のシニアは戦争を知らず」って、モップくんも戦争を知らないよね。シニアが知っている戦後の貧乏な時代すら体験していない。キミはその程度で自分ごととして戦争をとらえて来たんだね。多くのシニア層が、自分の生まれる数年前に起きた大戦争を「捉えたことがありません」と断言できるのか!

 さらに発言を確認しよう。

《日本は、沖縄を除き本土決戦がなかったので、徹底的に破壊されることがなく、戦前の政財界が戦後に引き継がれました。》

 おいお~い、東京大空襲を知らないのか?日本全土に延べ3万3041機のB29が飛来し、日本の都市を焦土にしている。東京空襲は122回、死者は13万人を数える。これで「徹底的に破壊されることがなく」ってよく言えるね。情報を知らないんじゃないの?

 続けます。

《つまり、封建的な体制が断絶していないのです。》

「封建的な体制」と言うけれど、その意味をちゃんと咀嚼して使っているのかな?呉智英『封建主義者かく語りき』を熟読したほうがいいよ。モップくんは適当に言っているが、全体主義ファシズムと封建主義は違う。

《なぜ戦争を始めたのかの検証すらしていませんが、戦中の東條英機内閣で大臣だった岸信介が戦後、首相になるのですから、自分で自分を断罪できるわけがありません。》

 是非ですね、令和政治社会問題研究所所長のキミが検証してくださいよ。そうすれば、なぜ東条英機内閣で商工大臣になったのか、戦後、公職追放処分を受けながらも、首相に登りつめていく過程は、日本を復興させるための必然とも言える。お勉強しましょうね。

 モップくんの発言の、この後ろがよく理解できなかった。

《だから広島や長崎、沖縄などで起きた悲惨な出来事だけにフォーカスし、平和が大切だと言うしかない。マイノリティとして社会運動を起こす可能性がある移民が増えないと、この体制は変わらない。》

 自分で自分を断罪できないから、広島原爆、長崎原爆、沖縄戦で平和を唱えるしかないと言うが、全国のあらゆるところで戦没者の慰霊は行われているし、靖国神社や各所の護国神社に行けば、いつでも平和の大切さを認識できる。

 で、続く「マイノリティ・・・」以下の発言が、何を言いたいのかが理解できない。「社会運動を起こす可能性がある移民」ってなに?移民が増えると体制が変わるの???

《すべての世代がぼんやりした戦後民主主義で育っているので、》

 それは言われるとおり。モップくんもワシャもみんながぼんやりしている。

ネトウヨは再生産されていくでしょう。》

 ネトウヨもパヨクも、テレビ局御用達コメンテーターも再生産される。

SDGs教育が民主主義教育に取って代わろうとしていることにも危うさを感じます。戦争や貧困による差別をなくし、社会問題を解決していくのがSDGsの本質なのに、日本ではなぜそれが必要なのかが無視されている。20年もしたら、『マスコミが報じないSDGsの嘘』みたいな動画が出現し、シニアが飛びつくでしょう》

 おおお、ここで突然「SDGs」が出てくるのに驚いた。あっちへ飛んだり、こっちへ行ったり。文章がまとまっていない。編集部の聞き取りで作成した稿の最終確認を、モップくんはしているのかな。おそらくしていないね。

 それはさておき、後段の部分への突っ込みですが、20年も待たなくて大丈夫。渡邉哲也『SDGsバブル崩壊』(徳間書店)なんて本も出ていますから。

 さあ、そろそろ最終結論だ。

 編集部の文章「何かに傾倒するのは、何もネトウヨに限った話ではないと古谷氏は最後に警告する。」に続いて、モップくんは《新興宗教マルチ商法陰謀論も同じ》と言い切っている。そのとおり。パヨクも公金チューチューリベラルも同じだ。

《これまで会った陰謀論者は女性が多かったですが、彼女たちは『自分で検索して選び取った情報や動画は正しいものだ』と考えるのです。結局は戦後民主主義であろうと何であろうと、我が事として身体化しておらず、知識がぼんやりしているから、価値観をひっくり返される》

 編集部のまとめ方の問題なのか、話が散らばっている。説明がなされていないこともあって、モップくんが何を言いたいのかが見えてこない。ただ、「これまでに会った」程度の数で、「陰謀論者は女性に多い」と言ってしまうのはいかがなものか。「結局は」と言って、今まで批判してきた「戦後民主主義」に並べて「何であろうと」と言ってしまっては、すべての事柄が「我が事として身体化しておらず、知識がぼんやりしているから、価値観をひっくり返され」てしまうよね。主語がないので、陰謀論者の女性なのか、シニア右翼なのか、その他なのか、判断しかねる。

 ふい~、面倒くさい文章だった。

 記事の最後にプロフィールがあった。

「82年生まれ。令和政治社会問題研究所所長。20代後半から保守陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、現在は距離を置いている。」

 最初は保守側だったんだけど、現在の保守論客は、レベルの高いリテラシーを求められる。そこからモップくんは落ちていってしまったようだ。

 評論家の石平さんと一緒になった時のこと、不勉強にも日本人の石平さんに対して「外国人が日本を褒めるのは過剰同化」と言ってしまい、大変なことになってしまった。どう見ても、誤りはモップくんにあるので、保護者同伴でわざわざ大阪まで謝罪に行ったんだとさ。

 ゲームクリエイターの暇空茜さんには「訴えるぞ!」と凄んでみせたが、「訴えるなら早く訴えてね」とあしらわれて、その後、知らん顔を決め込んでいる。

 石平さん、暇空さん、百田さんなどには歯向かえないので、彼らによい影響を受けているシニアの皆さんをこき下ろして喜んでいるらしい。がんばってね。