一昨日、いつもの本屋さんに立ち寄って、棚を物色していたら、侍ジャパンの栗山英樹監督の著書『栗山魂 夢を正夢に』(河出文庫)があったので購入する。そのあと、ちょっとした手続きで金融機関に行った。その待合で、読み始めたら面白くって、手続きが終わった後もそこで読み続け、結局、読み切ってしまった。
いい本だった。2017年に単行本として出し、2018年に文庫化したものである。だからこの間のWBCの6年も前に書かれているにも関わらず、大谷翔平の大活躍を予言する内容で、栗山監督の先見性に驚かされた。
第5章が「大谷翔平という夢」と題され、ここで高校生大谷翔平を説得して日本ハムファイターズに入団させたエピソードが描かれている。この章を読むと、ホントに大谷翔平がプロになるときに出会った監督が栗山さんでよかったと思う。
例えば、往年の名バッターの張本勲氏が監督だったら、間違いなく大谷を投手か打者のどちらかにしてしまっただろう。思い込みの強い経験則でしかモノを言えないバカに出会わなくてよかった。張本氏の思い込みについては、2021年に出版された『証言 大谷翔平』(宝島新書)にある。
栗山監督は言う。
《僕に対して「こうしましょうよ」とか「どちらかひとつにしましょうよ」と言う人もいます。けれど、僕は翔平が二刀流で大成できると信じています。野球界のすべての人を敵に回しても、自分の思いは絶対に曲げない。誰よりも僕が翔平の可能性を信じる。そして、信じ続けています。》
この結果は、皆さん、よくご存じですよね(笑)。栗山さんが信じ切った大谷翔平がWBCでどれほど大活躍をしたことか。そしてMVPを得た。大谷翔平を信じられなかった評論家たちは口をつぐむべきだね。
栗山監督、上記に続けてこんなことを書いている。
《実績を積んでいくと、選手は称賛を浴びる機会が増えます。その反面、注意されることが減っていきます。「ここまでは許される」という範囲が、相対的に広くなっていく。そのうちに、本人が自覚できないまま、わがままが通るようになってしまう。》
栗山監督は、こう続ける。
《もし何かおかしなことをしたら、「こらっ、偉そうにしているんじゃないと」と言う人が、両親以外にもいたほうがいい。》
これって、一般社会にも通じることで、トップが長期政権になってくると、まさにこの状態に陥ってしまう。「実績がモノを言うんだ」とトップ本人が思い始めると、もうその組織は下降線をたどっていく。
ワシャの仕事の関係者の皆さんには、およそ類推ができると思うけれど(笑)、無能なトップがたまたま祭り上げられて、その体制が長期になってくると、愚物も勘違いを始めてしまうんですね。
これを引きずり下ろすことは、生半可なことではない。木に登ってしまったバカを下す労力たるや、体重が4キロくらい減りましたぞ。
詰まらない話で脇道に逸れてしまった。栗山監督の話にもどす。
第6章が「夢は正夢」と題されて、その中にこんなフレーズがある。
《僕自身もまだまだ、夢を追いかけています。たくさんの夢があるなかで、たとえばひとつ。大谷翔平を、「世界一の野球選手」にすることです。》
栗山監督、こう言い切っている。そしてこのとおり、今回のWBCで大谷をMVPに仕上げて世界一にしてしまった。ホントに凄いな、栗山監督は・・・。
栗山さんは言います。
《壁にぶつかっている選手を助けるために、ひとりひとりの選手をもっともっと生かすために、心に届くアドバイスができるようにならなければと思います。》
こういうリーダーの下で働きたかったですね(笑)。
《不安を感じたあとに、自分を信じきって前に進む。これだけがチャンスを生み出すたったひとつの方法なのです。》
《自分との約束を破る人間くらい、くだらない奴はいない》
《学びそのものが人生には必要なのだ》
《この年齢(57歳)になっても新しい何かを知ることが本当にうれしいと思っている自分が、ちょっといたりする》
まさにそのとおりである。
栗山さんの本に出会えてよかったわい。