ラプラスの魔女

 桜井翔くんのファンの方がいたら、のっけに謝っておきますね。

 

 この間、桜井くん主演の「ラプラスの魔女」をビデオで観た。映画自体は「ふ~ん」という感じ。時間つぶしにはなった。だけど、桜井くんにはあちこちのシーンで笑わせてもらった。役どころは、まさにドラマの謎を解き明かしていく探偵役で、地球化学専攻のおちゃめな大学教授である。

 雰囲気としては、ガリレオシリーズの湯川学(福山雅治)の分身のような感じかなぁ。でも、湯川学の活躍する映画も、それほどまじめに観てきたわけではないので、この印象は間違っているのかもしれない。判らないけれど、桜井くんが福山湯川を意識しているように思えた。でも確信はないので、そちらには触れずに次に進む。

 要は、桜井くん演じる青江教授である。どのシーンを見ても、とくにセリフのないときに、そこに嵐の桜井翔がぬっと立っていた。本来は青江教授でなければならないのだけれど、桜井くんは一所懸命に監督の指示に従って表情をつくったりはしている。しかし、まったく内面からにじんでくるものがない。

 これについては、脚本家の倉本聰さんが、最新刊の『ドラマへの遺言』(新潮新書)でこう言っている。

《役者がものをしゃべらないときに何を考えているか、頭の中をどう見せるか。役者はインナーボイスをどれだけさらけ出して見せてくれるかっていうのが仕事なんですね。》

 桜井くん、表情はつくっていた。しかし、インナーボイスはまったく出ていなかった。他の役者たちが達者なだけに、その明暗がはっきりと見えてしまうのだ。桜井くんは好青年だと思う。司会もうまいし、キャスターだってこなす。嵐のコンサートでも輝いている。でも、俳優というのはいかがなものであろう。人それぞれ得手不得手というものがある。二宮くんの演技力は倉本聰さんお墨付きである。しかし、演技者として光っている二宮くんがキャスターをやれるかというと、それはなかなか難しいのではないか。

 桜井くんは、テレビドラマにも映画にもたくさん出ているので、たまたま「ラプラスの魔女」だけがよくなかったのかもしれない。ワシャが不勉強なだけかもしれない。他の映画にすばらしい演技があったのかもしれない。

 ひとつの映画の感想としてお聞きいただければ幸いである。