朝日をほめる

 朝日新聞にもセンスのいい編集者がいるんだなぁ~。昨日の朝刊1面である。まずはいつも批判ばかりしている「天声人語」なんだけど、これがそこそこよかった。

のっけにユーミンの「卒業写真」を持ってきて、〈ひとごみに流されて 変わってゆく私を/あなたはときどき遠くでしかって〉のフレーズを書けば、ワシャの年代の皆さんは、あの声とメロディーが脳裏に再生されるだろう。

 この詩に出てくる「あなた」を、天声人語氏は《かつては憧れの異性のことだと思って聴いていた。でもいまは18歳の自分のことだと思う。変だろうか。》

 変だ。「あなた」は「貴方」であり「私」ではない。「自分」じゃない。なんで「自分」が「私」から遊離して、遠くに行き、離れた別の場所から「叱る」って、意味が解らない。

 さらに言えば、この詩の「あなた」については、ユーミンのコメントが出ていたと思う。これは、憧れの教師のことだった。

 映像的にいうと、主人公の「私」が2~3年後だろうか。例えば渋谷の街角で、高校時代に憧れていた美術教師を見かける。先生は、3年前と変わらないジャケットを着て、画材の入った大きな袋を抱えてスクランブル交差点を渡っていった。少し長めの髪をかき上げるしぐさは、卒業写真と同じだった。そんな詩ではないか。

 でね、昨日の朝日のいいところはここからです。この「天声人語」の真上に、写真があったんです。大阪市の高校の卒業式をサイドの記者席から撮影したものだと思う。手前にセーラー服の女子生徒、奥に学生服の男子生徒。写っている子供たちの表情は解らないが、たったひとりだけ、構図の中央にいる小柄な女の子だけが、カメラの方向の友達に笑顔を見せている。上手い一枚だった。

 この写真を見せて、その下でユーミンの「卒業写真」のフレーズを読ませる・・・なかなかやるじゃないか、朝日新聞