NHKの劣化

 正月のNHKドラマ「いちげき」

https://www.nhk.jp/p/ts/BL2M2JP15Z/

を見た。宮藤官九郎シナリオというので興味があったのだ。

 結論から言えば、空想歴史ドラマとしてはいい線をいっているが、さすがに幕末史に詳しいワシャ(自慢高慢バカ)には違和感がありまくりだった。

 まず物語を簡単に。

 幕末の江戸、徳川政権をかく乱するために、薩摩藩士がゲリラ活動を始める。これは史実にもあるんでスルー。これに対抗するために幕府側の勝海舟は「一撃必殺隊」という百姓組織を編成する。当初は1か月の訓練期間を想定していたが、薩摩ゲリラの活動が活発になっているので、速成6日間で百姓を一撃必殺要因に育て上げる。ここらに無理があるよね。百姓は6日では武人になれない。考えてみてくださいよ。皆さんが、剣道を初めて習って6日でものになりますか?剣道の有段者、初段程度にも絶対に勝てません。「一撃必殺!」と叫んでも間違いなく初段に叩きのめされます。いわんやそれが薩摩兵、彼らは幼いころより薩摩示現流という相手を一撃で仕留める独自の剣術修行をしています。そして侍ですから武人でもあります。そもそもの気概が違うのです。さらに加えれば、薩摩兵というのは戦国期から先の大戦までもっとも強い兵と言われていました。上州あたりの百姓が6日間の付け焼刃で勝てる相手ではないことは自明の理と言っていい。

 日本最強というか、世界でも屈指の強兵を素人がバッサバッサと切り倒せるわけがないわさ。

 もう一点、雪の日に薩摩の侍が20人、首領の警護をしながら街をゆく。攻撃側は百姓部隊7人。その時に薩摩侍は、己の太刀に束袋をかぶせていたので、第一撃に対応ができないという設定。おいお~い、8年前の桜田門外の変で時代が大きく変革していったんですよ。その変には薩摩侍も参加していた。その時の井伊直弼側の敗因は束袋が外せなかったことが原因とされている。そのことについて幕末武士は熟知している。実戦部隊の首領警護に桜田門の轍を踏むというのは、説得力がない。

 工藤さん、原作があるにしろちょいと甘いな。

 

 リアリティを持たせるためには、6日間の訓練機関というものをもう少し長くするとか、多摩地域から、近藤勇土方歳三も一目置いた剣客が百姓に身をやつしていたとか、もう少しディテールを詰めたほうがいい。

 キャストもよかったし、主人公のウシの妹が理不尽な侍に強姦されるところなど、なかなか考えさせられるところもあった。侍に因縁を付けられたウシをかばって「お兄ちゃんは大切な労働力だから・・・」と、ウシの身代わりになって侍に体を与える。このことに起因して、ウシの侍への恨みが積もっていくのだが、これって、今の日本にも切実につながっていることなのである。

 支那にしろロシヤにしても武力をもった理不尽な侍である。無抵抗の百姓だから、妹は連れ去られ犯されることになる。無防備ということは、そういうことなのだ。だから妹に二度とそんな辱めを受けさせないためにも、ウシは太刀を取った。そして理不尽な侍を攻撃していく。

 そういった意味では、考えさせられるドラマではあった。