勝谷さんも自衛隊が好きだった

 今朝の朝日新聞、社会面。

《「防衛力抜本的強化」の中――自衛官足りない》という見出しがあった。記事の冒頭はこうだ。

《岸田首相が「防衛力の抜本的強化」を掲げる中、自衛官の確保が難航している。少子高齢化で募集対象者が先細り、応募者も減っているためだ。その「人集め」の手法を疑問視する声もある。》

  さすが朝日(笑)。防衛力を強化しようという前向きな話の展開かと思いきや、羊の頭を見せておいて狗の肉を買わせるつもりの記事だった。

 記事の展開はこうだ。

 まず、陸上自衛隊が昨年開催したオンラインのインターンシップの話をもってきて、仕事の内容を問う学生に「国家や社会への貢献ができる」と応じたことを紹介している。このあたりは、「朝日にしては自衛隊に好意的じゃないか」と思わせる。

 中見出しの《自治体が市民の情報提供 批判も》以降に肉は狗に変っていく。

《ただ、自衛官募集の手法をめぐっては一部で批判の声も上がる。》ときたもんだ。これはね、防衛省が全国の自治体から、募集対象者の住所などの連絡先の情報を「本人の承諾なし」に入手していることを特筆しているのである。

 ここで、兵庫県弁護士会を登場させて、「自衛隊への情報提供はプライバシー権保護の観点から問題がある」と言わせる。

 さらに、上智大学名誉教授なる人物を出してきて「情報の閲覧は制限されるべき。徴兵制につながるような強制力を伴う人集めは不可能だ」と強弁させる。そして最後に「外交交渉による紛争解決を最優先し、これまで以上に専守防衛に徹し、守りを固めるほかないのでは」と結論づけている。

 この名誉教授、防衛の専門家かと思いきや、歴史人口学のシェンシェー様なのでした。なんだ、外交の専門家でも防衛の研究者でもないのか。そんなワシャよりも外交・防衛に対する知識のない老人が、なにを偉そうに「外交交渉が最優先、専守防衛に徹しよ」とほざいているのか。

 外交交渉で上手くいくならウクライナの悲劇は起こらず、専守防衛に撤すれば第一撃で日本は壊滅する。歴史人口学で戦争が語れるか!

 今日の朝日でおもしろかったのは、「be on Saturday」という別刷りだ。1面が「フロントランナー」というコーナーで、今回は精神科医で作家の和田秀樹さんだった。和田さんとは一度だけご縁があった。東京で開催された連続16時間セミナーで、濃密な講義を受けた。18年前のことなので、和田さん44歳と若かった。

 その時の講師のラインナップにコラムニストの勝谷誠彦さんもいて、和田さんの後の講義が勝谷さんだった。

 和田さんと勝谷さんは灘高校の同級生で、どちらも発達障害を自認していた。とはいえ、タイプは違っていて、勝谷さんは自分を「劣等生」と自慢しており、和田さんのことを「優等生」と見下していた。 和田さんは朝日の記事中で自身を「劣等生」と言っているが、東大に現役合格し、著書を800冊も世に出している状況は「劣等生」とは言えない。勝谷さんが若干の嫉妬も含めて「優等生」と言っている方が正しいだろう。 その優等生の和田さんが、苦手としていたのが勝谷さんで、その2人が続けて講義を行ったことは、今考えれば奇跡のようなことだったんだなぁ(遠い目)。

 ちょっとその時のことを思い出しますね。

 1月下旬夕刻の渋谷、寒風の中を勝谷さんが会議室に入ってくる。「多忙コラムニストの技術」という題で話を始めるんだけど、話し出した途端、「で、その前に、なぜ、オレの前が和田秀樹なんだという、納得がいかないぞと。和田は言いました?オレが同級生だって話?」とまくし立てた。

 司会者が「言ってないです」と答えると、勝谷さんは「しなかった!せんかった!そこにまだいる?もう帰った?」と言い、もういないことを確認するとこんなことを言った。

「和田くんとは、灘中、灘高とずっと同級生なんです。同級生も同級生、あそこ170人くらいしかいないから、みんな顔見知りで、今でも同級会とかやっているんです。彼は入学したときに5番なんですね。(中略)僕はというと、1年生の1学期の中間試験で、177人中、175番に落ちてから、ずっと、ず~っと!潜航艇浮上せずと」

 てなことを思い出して、ああ、勝谷さんが生きておられたらまた楽しかろうに・・・と、勝谷さんが目の敵にした朝日新聞を読んで思った次第でした。