安倍晋三という奇跡

 7月9日午前5時50分。私はある小説の一章節を思いだし、少し涙ぐんでいます。司馬遼太郎の『竜馬がゆく』の最終章です。

《それが、竜馬の最後のことばになった。言いおわると最後の息をつき、倒れ、なんの未練もなげに、その霊は天にむかって駈けのぼった。天に意思がある。としか、この若者の場合、思えない。天が、この国の歴史の混乱を収拾するためにこの若者を地上にくだし、その使命がおわったとき惜しげもなく天に召しかえした。この夜、京の天は雨気が満ち、星がない。しかし、時代は旋回している。若者はその歴史の扉をその手で押し、そして未来へとおしあけた。》

 戦後、左翼勢力に席巻され、国家としての尊厳すら失いかけていた日本。ついには左翼政権まで許し、このまま思想のない空っぽな小国が東アジアで大国の属国に成り下がって生きていくのか・・・と保守や愛国の人々は思っていた矢先に、若き政治家が颯爽と登場した。そして、左翼や反日や親中や親露勢力に何度も叩きのめされながら、しかしまた復活して歴代最長の長期政権をつくった。反日売国のツタが絡まってびくともしなかった扉がようやく開いたのである。おかげで多くの国民が目覚めはじめた。扉が開いたとたんに、偉人は「それじゃああとは頼んだよ」とばかりに、なんの未練もなく天に帰ってしまった。大和西大寺駅前で救急救命を受けている安倍さんの顔は微笑んでいたようにさえ見えた。

 

 天には意思がある。

 

 久方ぶりにそう思わされた大事件だった。

 坂本龍馬の後には、次から次へと時代の変革者が続き、明治という新国家を樹立した。しかし、後々、「やはり龍馬がいればよかった」と言われるわけだけれど、それでも欧米列強のアジア侵蝕を、日本だけが免れたことは歴史的事実として残っている。

 安倍さんの後に、どれだけの逸材が残っているのか不安だが、まずはこの大事件に接して、岸田総理が変って欲しい。たんなる財務省のロボットではなく、国士に、真の愛国者に変貌し、国家のために命を賭してくれ。そして、「ああ、安倍のあとに岸田がいて本当に日本はよかった」と言われるようになれば、日本国は安泰であろう。天の安倍さんも本望だと思う。

 各党党首も、各新聞も「暴力は民主主義の破壊だ」とか騒いでいるが、あのクソバカヤロウが、そんな上等なことを考えて改造銃をつくって、安倍さんを襲撃したのではない。「民主主義」を盾にして、社会の公器であると言い張って、世論誘導をし、特定の人物を考え方が違うということだけで、誹謗中傷してきたメディア、左翼勢力がテロリストを養成してきたといっても過言ではない。あの危痴害を生み落としたのは「モリカケサクラ」で乱痴気騒ぎを繰り返してきたメディアと左翼一派と言っていい。なにを今さら「民主主義の破壊」か。

 岸田首相も「卑劣な蛮行」と言っているけれど、クソバカのやったことは表層でしかない。そしてそれが卑劣な蛮行であることは論を俟たないが、その危痴害ざたの向こうにあるものをしっかりと見極めないとダメだ。とにかく腹を据えよ。

 

安倍さんが竜馬と重なってしまって、勢いで1200字を書いてしまった。本当は真面目に哀悼の意を捧げたかったんですけど(泣)。

 

 安倍晋三さん、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。安倍さんが首相をしていただいたおかげで日本がかつてよりややマシな国になったと感じています。あのまま民主党政権が続いたらと思うと、背筋が寒くなります。

 最近の「WiLL」や「Hanada」には安倍元首相が出ずっぱりで、「WiLL」6月号には《“魔の三核地帯”に立つ日本 プーチンは力の信奉者》と題して、前国家安全保障局長の北村滋氏との対談が載っています。

「Hanada」6月号では、《これは「歴史戦」だ 佐渡金山、「世界遺産登録問題」》と題し、産業遺産情報センター長の加藤康子氏と対談しておられる。

「Hanada」7月号は「安倍元総理シリーズ対談」で、元内閣官房参与本田悦朗氏と《アベノミクス批判に反論する》について語り合っている。

「Hanada」8月号には、国家基本問題研究所理事長の櫻井よしこさんと《「歴史戦」は真っ向から闘え!》で議論をし、「WiLL」8月号でも櫻井さんと《防衛費GDP比2%は独立国家の覚悟の証だ》をテーマに葛西JR東海名誉会長を偲んでおられました。

 また「文藝春秋」5月号の緊急特集「ウクライナ戦争と核」に《「核保有」の議論から逃げるな》という論を寄稿しておられる。その文末を引かせていただきますね。

《国家の独立、そして国民の命を守ることは政治家の使命です。どうすれば世界の脅威から日本を守れるのか――核抑止の問題を含め、今後も議論を促していきたいと思います。》

 安倍さんの言われるとおりです。

 2006年に安倍さんは『美しい国へ』(文春新書)を上梓されました。さらにそれをグレードアップした『新しい国へ 美しい国へ完全版』(文春新書)を2013年に出しておられ、ワシャはどちらも持っているが、これは「強い日本」を取り戻すための総合計画と言っていい内容で、この本のとおりに施策展開ができれば日本国民は本当の幸せを得ることができると思います。

 とにもかくにも日本周辺は「魔の三核地帯」と化し、周辺海域には不埒な連中が迫ってきています。危機度から言えば幕末の比ではありません。 ぜひとも、この国を愛する者たちは『美しい国へ』をバイブルにして、新たな時代を切り開いていきましょう。

 安倍さんの死を無駄にしてはいけません。