ちょいと博物館

 今日の午前中、近くの博物館に行ってきた。仕事のからみで2時間ばかり館長や学芸員に取材をさせてもらったのだ。その延長で、たまたま無料の企画展がやっていたので、見せてもらうことになって、若い女性の学芸員が案内をしてくれた。テーマは「お米に関わる昔の道具」で、平鍬、風呂鍬、備中鍬から田打車、田舟、踏水車、竜骨車までが展示してありました。

 最初はね、学芸員の人もオジサンばかり4人なので気乗りがしてなかったようで、通りいっぺんのことを説明していたんですよ。

 たまたま、備中鍬のところで、「おおお!」とワシャが声を上げたので、「どうかしましたか?」とわりと冷たい感じで言われてしまった。

 そのコーナーには備中鍬が8本並んでいた。三本備中あり、四本備中もあって、がん爪や熊手も揃っていて、さらに同じ備中でも柄の角度が変えてある仕様のものが展示してあった。

「これですぞ!」

 ワシャは学芸員の見学のオジサンたちのほうに向きなおった。

「これは日本の文化の秀逸さを表した展示と言えます。司馬遼太郎さんがね、朝鮮半島に行かれた時に、農家を覗いたことがあって、そうしたらその農具の少なさに驚いた・・・というようなことを書き残しています。朝鮮半島を含めた大陸の農業は、それほどの道具を有していなかった。鍬なら鍬だけで農地を耕してきた。ところが日本の農民はすぐに工夫を施してしまう。だから、いろいろな用途に合わせて、道具が千差万別に作成されていた。つまり、この展示はそういった日本の農業のもつ特殊性、優秀性を見せている。歴史を重んずる博物館としては上等の展示、意味深い展示と言っていいでしょう」

 てなことを演説してしまいました。この時から、学芸員のオネーチャンの説明に気合が入ったんですわ(笑)。展示を褒めたこともよかったんでしょう。それに、単なる暇つぶしのジジイだと思っていたのが、ちょっとした博学さを見せたので、「負けてはいられない」と対応を入れ替えたのかもしれません。

 なんにせよ、媚中鍬を見て、司馬さんを思いだし、そこから農具の歴史に想いを馳せるというのも一興ですな。