都構想

 今朝の朝日新聞社説。テーマは「都構想と維新」、お題は《「否決」の重み忘れるな》である。

 そうか、朝日新聞社説がそう言っているということは、「否決」の重みは忘れてもいい・・・ということだな(真面目)。

 内容を見てみよう。

大阪都構想は2度にわたって否決された。にも関わらず大阪維新の会は拮抗した民意を継ごうよく解釈し、都構想簡易版との言うべき改編を進めている。

大阪府と市で「一元化条例」が成立して、広域の成長戦略や都市計画の一部を、市から府に委託するのは、地方分権の流れに逆行する。

③府と市の間にあった二重行政の解消を進めようとする吉村府知事は、改革に取り組んでいる姿勢を見せて支持をつなぎとめたいだけだ。

④知事は市の24の行政区を8つの「総合区」に再編しようとしているが、これはいまの行政区より権限と財源の自主性を強めることになる。

⑤都構想を退けた住民の思いには、現行の24区への愛着も込められていると考えるのが自然だ。

⑥コロナ禍で多大な労力と費用を要する制度変更を急ぐ必要があるのか。「府・市一元化条例」は白紙に戻せ。

住民投票で示された民意に誠実に向き合え。

 とまぁ、このくらいのことを論説委員は言っている。この全部に反論をしたい。まず、①と⑦だ。住民の示した民意は拮抗していたはずだ。「民主主義、民主主義」と騒ぐけれど、拮抗していたということは、ほぼ同数の「都構想賛成者」がいましたよね。民主主義というのは勝ったほうが絶対勝利者ではなく、その折衷案をどの程度のところに落とし込んでいくかが大切な制度だと思っている。

 評論家の呉智英さんが「週刊ポスト」の最終回のコラムで言われた「有権者ひとりひとりが賢明にならなければ、民主主義はうまくいかない。そして有権者ひとりひとりが賢明になる社会など永遠に来ない」ということなのである。

 賢明なる知事や市長が、民意の按分を検討しながら、手続きを踏んでいくことに何の問題があろうか!

朝日新聞、賢明でない有権者を煽ってんじゃねえぞ。

 

 ②である。これはこの論説委員が行政をまったく知らないというだけのこと。いいかいおバカさん、行政というものの中には大きな規模でやったほうが効率がいいことと、小さい規模でやったほうがいいことなど、いろいろとあるのだ。「広域の成長戦略」「都市計画の一部」などはまさにそれに該当する。これはおバカさんの言う「逆行」とはまさに「逆行」するもので、論説委員よ、地方行政を勉強し直してこい。

 

④の「市の24の行政区を8つの「総合区」に再編」って、当ったり前じゃねえか。今の大阪市の区は地方自治体ではない。小さな区に選挙を経ない役人区長がいるだけの、まったくの市の出先機関となっている。これではダメで、だから人口30万人程度の規模に再編して、自治体としての機能を持たせることにより、効率をよくしていこうというものなのである。当然のことながら、このことで区は自治体になるのだから、出先機関より権限と財源の自主性を強めることになり、それと同量の責任を負うことになる。これのどこがいけないのかニャ?

 

⑤の「愛着」がいけない。「愛着」は「既得権」とも読み替えられる。こういった行政改革は「既得権」との戦いでもある。ギリシアの昔から有権者が賢明であったためしはない。これは呉さんの言われるとおりで、この有権者から「既得権」をはがすことがどれほど大変なことであろうか。まさに2度の「都構想敗北」は「既得権益者」との戦いの結果なのである。

 

⑥は笑える。「コロナ禍で多大な労力と費用を要する制度変更を急ぐな」って、武漢ウイルス対策にこそ、そういった二重行政の弊害を急がなければいけないのだ。そして、確かに保健衛生部門は忙しかろうが、かといって府、市の他部局が武漢風邪に忙殺されているかというと、そんなことはなく普通に業務をこなしている。「社説」なんていう影響力の大きいものを書くんだったら、近くの行政に顔を出して、状況を見てこいや!

 この「社説」を書いた論説委員も含めて朝日新聞は、「読者など衆愚だから、俺様たちの書くことは鵜呑みにして信じる。俺様たちが導いてやるからありがたく思ってついてこい」と思っている。思っていなければ、立て続けに「捏造記事」を出せるわけないよね。

 

 もう一昔前の本になるけれど、内閣官房参与高橋洋一さんが『大阪維新の真相』(中経出版)という新書サイズの本がある。これを読むと、朝日の論説委員が吐いている嘘のかたちがよく判りますぞ。