夢のまた夢

「露と落ち露と消えにし我が身かな浪花の事は夢のまた夢」
 豊臣秀吉の辞世の歌と言われている。まさに敗軍の将橋下徹大阪市長も、この心境ではなかろうか。大阪都構想に「NO!」が突き付けられた。その差は0.77%(10,741票)でしかなかった。それでも敗けは敗けである。近世以前か北朝鮮なら命を取られているところだ。

 基本的にワシャは「大阪都構想」には疑問を持っていた。しかし、体裁は悪くとも改革も必要だと考えていた。ワシャが大阪市民でもこの投票は迷ったであろう。
 ただ、良きにつけ悪しきにつけ、いい男が政治から去っていく。一時代は終わった。
 2008年2月に大阪府知事として登庁して、以来7年3ヶ月が過ぎている。幕末でいえば、桜田門外の変から坂本竜馬の死までの時間が7年10カ月。これだけの時間を費やしても大阪に維新はやってこなかった。知事も1票、生活保護で昼間から飲んだくれている年寄りも1票という民主主義システムの中ではいかんともしがたかったのだろう。
 橋下氏の敵は、自民、公明、民主、共産という、もうごちゃまぜの集団が、神妙な面持ちで勝利宣言をしていた。2列目の席にはちゃっかりと太田房江元知事が座っている。おそらくこのメンツでは百年経っても何もできまい。意見の取りまとめどころか、既得権の引っ張り合いで数年はあっという間に過ぎていく。それも含めて大阪市民の選択なのだから仕方がない。大阪市民の民意なのだから、彼らが責任を取ればいい。
 橋下政策の煮込みはやや甘かったかもしれないが、橋下氏ほどの首長はおそらく二度と現われまい。それを大阪市民は排除した。繰り返すが、大阪の改革には福島原発廃炉より時間が掛かるのではないだろうか。
 そうそう、開票を最初から見ていたのだが、とても特徴的な票の開き方をした。北部の区では早々に開票が終了になったのだが、南部の区は開票がかなり遅れた。遅々として開票の進まない区には共通項がある。それらの区は「反対票」が多いところばかりなのだ。「反対票が多い」→「開票が遅い」→「開票事務がのろい」→「開票にあたっている職員がのろい」→「地域がそういう風土を持っている」
 ワシャの町では、他の地域が開票終了しているのに「開票率30%」などと恥ずかしくて出せまヘン。生野区住之江区鶴見区西成区などには、そういった恥の文化はないのかにゃ?もう少し開票努力をしないと、「相変わらず大阪やな(笑)」という話になりまっせ。

「7年半、やれることはやってきた。無理してきた。ずっと自分のことをやってきた人生だったが、この7年半は公のことをやらせていただいた。この結果に悔いはない。住民投票の結果で退陣できることはありがたい」
 橋下さんは笑顔でそう言った。

 もののいい政治家は去り、病欠エリカさまは残留する。これでいいのかい日本の政治って(泣)。