老人と熱海

 先月、所用で熱海市に行った。10年前にはほとんど壊滅状態のようになっていた熱海駅周辺の中心市街地を復活させたキーマンに会うためにである。

 奇跡の熱海の商店街復活を書いた本がある。市来広一郎『熱海の奇跡』(東洋経済)である。そのまんまのタイトルだが、これが事実だからおそれいる。その市来氏に街づくりの経過を聴くことが今回のミッションの主なものだった。市来氏、現在41歳の若き仕掛け人。10年前に彼が熱海にUターンし、ゼロから街の再生に取り組んだ。ワシャが10年ぶりに熱海に来たのは、平日だったけれど、多くの若い人たちが熱海銀座通りを闊歩していた。以前の温泉と宴会の町が大きく変化していた。街に若さと元気がみなぎっている。市来氏が、熱海のターゲットを、コンパニオン目当ての宴会ジジイから、情報発信ツールを使いこなす若者層に切り替えた成果が確実に出ていた。

 市来氏が、地元に戻って、若い仲間を集め、ほんとに小さな事業を立ち上げて、そこから徐々に拡大していき、ついには街の再生にまでつなげる。見事な仕事と言っていい。

 

 いい話のあとはマヌケな話を。

《「問題ない」強気から一転 謝罪会見 愛知・西尾市議ら反省の弁》

https://news.yahoo.co.jp/articles/36186bd8dde01f949f00c6e860c7dbe55129f307

 12月議会が終わって、14人の市議会議員がコンパニオンを呼んで宴会をした。確かに今の武漢ウイルスの拡大状況を見るにつけ、今、やらなければいけなかったのかと言いたくなる。実際にワシャは、この12月に西尾市の関係者との宴会を決めていたが、早々に中止の判断をした。

 それにしても、この件に関しては、突っ込みどころ満載だ。

 まず、78歳の市議の夜の対応がまったくOUTだった。記者が自宅まで来ているのである。まずは「ことは大事になっている」という認識を持たなくてはいけない。

市議「何にも別に悪いことしているわけじゃないもんで・・・」

記者「市民の理解を得られるとお考えですか?」

市議「市民の理解とか別に・・・。『議員だから飲んじゃいかん』とかはないんじゃないの」

 と、マスクもせずに仏頂面をカメラの前に晒して、田舎の爺さん丸出しの三河弁でこうまくし立てた。これを全国放送されれば西尾市の印象は悪くなると思うよ。記者に喧嘩を売っているような口調だ。これではまったくリスク管理がなっていない。まずは謝罪だ。

 まともな市議ならこう言うんじゃないの(笑)。

「(神妙な面持ちで)申し訳ありませんでした。経済対策という思いもあって、感染対策はしっかりやっていたんです。ソーシャルディスタンスもとっていたし、換気も充分考慮して開催したつもりなんですが、やはり考えがいたりませんでした。(頭をひとつ下げる)慰労と情報交換を兼ねて実施したわけですけれども、市民の皆さんが一所懸命にコロナ対策で頑張っておられる時に、軽率な行動であったと深く反省しております。今後は、議員が率先垂範してコロナ対策にまい進してまいりますので、市民の皆さんにはご寛恕いただきたいと思います。どうも申し訳ありませんでした(深々と頭を下げる)」

 間違っても「議員だから飲んじゃいかんのか!」なんて言ってはいけない

 今さら、どうしようもないが、このシナリオで記者の取材を受けていれば火はここまで大きくはならなかっただろう。

 あるいは、せめて市会議員の経営するホテルで開催せず、コンパニオンを頼まず、市長も衆議院議員も呼ばず、身内だけで静かにやればよかったのにね。

 まぁ新聞にでかでかと載っているので名前を出すけれど、「市民クラブ」という会派で懇親会を開いた。会派自体は17人だが、宴会参加者は14人なので3人が欠席をした。漂ってくる噂では、この欠席者がリークしたとも言われているが、その真偽はまったく定かではない。明確に言えることは、17人中13人が65歳以上であり、70代が7人、80代が1人と、かなり高齢化が進んでいる。そもそも西尾市議会では70代以上が11人おられ、かなり高齢化の著しい議会なのだが、この会派だけで8人ということだから、さらに高齢化率の高い老人クラブのような会派だったと言える。

 だから考えようによっては、コロナウイルスに関して言えばかなりリスクの高い集団とも言えるわけで、そういった観点から見ても、爺様たちの軽挙だったと言わざるをえない。

 熱海市は41歳の若者が街を再生し、西尾市は爺様方が全国に恥をまき散らしている。市議会議員なんてわざわざ高齢者がやらなくてもいいわさ。西尾市にも周辺の自治体にも若くて頑張っている議員は数多いる。熱海市のように、若手にしっかりとバトンを渡して、責任も持たせて、年よりは応援団にまわる、これが街づくりの要諦だと思うが、如何かな?