手に汗握る会議は楽し

 凸凹商事の大きな会議が取りあえず山を越えた。やれやれだ。今日もちょいとトラぶっている案件があって、それについて、経営側と綿密な打ち合わせをして、段取りの原稿までつくって会議に臨んだ。

 どうだろう、資料だけでバインダー6冊、そこから抜粋した原稿は30ページに及ぶ。仮にG案件とでもしておこう。このG案件、じつは不良案件なのである。しかし10年も前のことであり、すでに世間的には沈静化したものだった。だから経営陣としては、なるべく触らずにそっとしておきたい案件だった。しかし、そういうものをいじくりたい輩もいて、「いじるとデカくなるから止めておきなさい!」と制止したのだが、結局、いじくるのが好きな反対派の役員が取り上げてしまった。

 その火消しに回っているのだが、経営陣も反対派の役員も一歩も引かず、ごたごた案件となっていたのだ。

 でね、会議のやり取りとして、ワシャから経営陣への質問の形をとりつつ、経営陣はワシャに答える態で、反対派の役員に止めを刺そうという設えにした。これに1週間は費やした。なんだか朝の更新が滞ったり、遅れたりしていたのはそのためなのですじゃ。

 G案件がらみの議題は当初30本近くの数があった。しかし、会議の早い段階で多くの議題をつぶし、最終的に4本までに抑え込んだ。それが今日なんだけど、3本までは粛々と進んだのだが、その後の休憩で、何を思ったか、反対派の役員たちが会議室から退場してしまった。その動きを察知した賛成派の役員からは動揺が起った。

 その時、÷沢直樹が動いた。経営陣席にゆき、1週間がかりで設えた台本を「ちょっと待て」と止めたのだった。会議が再開され、÷沢が手を挙げれば、すべてが予定通りに動き出す。通常、この手の会議はいったん始めた会議を台本からはみ出させることを嫌う。

 すべては反対派に聞かせるための質疑応答である。相手がいなくなれば、ほぼ意味を持たないものとなる。それどころか、会議の内容は議事録で後日確認ができるので、結局、意見表明のニュアンスは伝わらず、字面で情報のみが相手に渡ってしまう。3本を否決して意気消沈しているところに、一見折衷案に思える話に納得させるのが眼目だったのだが、それができない以上、撤収に限る。台本は大きく狂うことになったが、結局、反対派の役員たちが戻らなかったので、4本目は粛々と裁決をして過ぎて行ったのだった。ワシャの足元には何枚かの原稿が散乱していたことを、ごく一部の人間を除いては知る由もない。「今日のワルシャワは静かだったな」くらいのことである。