熱量

 昨日、愛知県安城市で講演会があった。「みらい協創フォーラム」と題されたもので、この市の好きな造語と平仮名の「みらい」を合成した、何を言いたいのかよく解からないネーミング。

 チラシを見ると、「みんなでつくる、幸せな暮らし、仕事、地域。」とあって、これは行政がするべきことを並べただけ。その下には「公共空間の活用をテーマに公民連携のあり方や実践方法をみんなで考えよう。」とある。「公民連携」というのが、今、地方自治体ではトレンドですよね。だから、その公民連携を勉強しようということで、それはそれで意味のあることではあろう。

 基調講演が青木純氏。東京池袋界隈に土地建物を所有する大家さんだそうです。

http://www.yamorisha.com/partner/1612

 講演の内容はまさにこれ。

https://layout.net/event/kaitaishinsho-03-report/

 南池袋公園

http://www.city.toshima.lg.jp/340/shisetsu/koen/026.html

をステージにして、《行政と地域とが協働しながら公園空間の良好な保全と健全な賑わいを創出》したわけです。このために《地域の活性化を図ることを目的に、「南池袋公園をよくする会」が設立され》、その中の中心的なメンバーに青木氏がいたということ。

 講演の内容は、消滅可能性都市の上位にランクインしていた池袋をいかに再生したか・・・みたいな話だったけど、実は、公園でイベントをやって、その近くのとおりでイベントをやっただけというもの。池袋の復活は、もっと大きな東京圏全体の活性化や土地利用が影響したものであって、公園の活性化はその枝葉の一枚に過ぎない。

 同じような動きは、すでに安城市のアンフォーレ広場でもやっていることである。たまたま、青木氏の手がけたところが、東京都心であり池袋という都下においても有数のターミナル駅、繁華街を背景にもっている場所だったということ。放っておいても人は集積しているのである。そこで気の利いたイベントを仕掛ければ、人が出てくるのは自明の理。実際に、三河の田舎町の図書館脇の広場にだって、気の利いたイベントを打てば人は集まってくるのだから。

 ということで、「イベントの仕掛」自体には、いまさら首肯すべきところは見受けられなかった。どこでもあっている町興しのひとつでしかない。そこにキャンバスがあったので、多少の絵心があった人間が筆をとったら上手に描けたけましたということである。この公園物語に奥行きはない。

 でもね、興味深いことも言っておられた。公園イベントを仕掛ける時期の豊島区の副区長が国土交通省の出向者だった。この存在が大きい。選挙で選ばれた区長などには、偏った・・・というといけないね、「特化」と言い換えよう(笑)。選挙で選ばれた区長に特化した考え方はできない。気の小さい真面目な首長に「英断」は下せないのである。

 それを見越した青木氏は、国交省から来ている副区長に話を持ちかけた。ここは上手いね。

補助金などは要らないから意思決定はこちら側でやらせてくれ」

 これに国交省のキャリアは応じた。ここが国から来た副区長のいい加減さ・・・というといけないね、「懐の深さ」と言い換えよう。この判断を行政側がすれば、イベントはほとんど成功したようなものである。

 池袋界隈にビルなどを所有する金もあり人脈もある暇なニイチャンがいて、その人にある程度のまちづくりの熱量があり(まちづくりで所有する資産の価値を高めようという欲もあり)、そこに南池袋公園というステージがあって、成功しない方がおかしい。極論を言えば、今、都下においてイベントを打って、失敗する方が難しかろう。実際に、神田でも地域おこしが始まっているし、谷中や根津ですら人は集まっているのだから。

 

 冒頭に主催者が挨拶をしていたが、原稿を手にもって、訥々とそれを読み上げていた。まちづくりには熱量が必要だと言った。少なくとも、青木氏や来場者を前にして、主催者は熱く自身の思いを自身の言葉で語らなければいけなかった。

 

 アリバイ的に開催するイベントの底はすぐに見透かされるということを主催者は知っておくべきであろう。