ご近所さん

 大阪女児誘拐事件のことである。事件の本体については、とくに触れない。気になったことは、犯人及び犯人の家族を語るご近所さんである。なんであんなに滔々と犯人の家族のことを話せるのだろう。犯人の子供のころからの生い立ちを、なぜあれほど詳細に知っているのか。

 ワシャは、能弁なご近所さんを見て、戦慄を覚えた。あれほどネガティブな情報を、ご近所さんは、日常的に収集しているとは。ご近所さんは、ある種の監視装置なのだなぁ。嫌な話だけれど、人の不幸は蜜の味ということである。加害者が、高校受験に失敗した時も、ご近所さんは「〇〇君、第一志望校に落ちたらしいわよ」と噂していたに違いない。就職しなかったことについても、祖母の介護のために母親が家を出たことも、ネガティブに脚色をされて地域の人に共有されていく。

 地域コミュニティでは、いまだに「同質性」を求められる。少しでも違うと「変っている」という評判が立てられ、疎外されていくのだ。

 誘拐事件はあってはならないし、加害者は責められるべきだとも思っている。しかし、ニュースを別の視点から見ていると、いろいろなことが気になってくるのだった。