そっくりさん

 昨日、人間ドックの再検査の結果を聴きに隣町の総合病院に行ってきた。結果はなにもなかったのだけれど、二次検査の赤い通知が舞い込んだ時には、ちょいと驚きましたぞ。今まで引っ掛かったことのない部位だったんでね。
 検査結果が出る直前まで、あることについて積極的に動いていた。でも、「あんた病気かもしれまへんで」という通知をもらっちゃうと、やっぱり意気消沈してしまう。だったらさっさと二次検査をやって、診断を下して欲しいものだが、検査日は2週間後、検査結果の説明はさらに2週間後ということで、病気があるんだかないんだか、宙ぶらりんのまま1ヶ月を過ごさなくてはいけない。
 ちょうど時を同じくして、同じ会社の人間が、人間ドックで病気が発見されて、そのまま入院したという話を聞いていたので、少しビビッてしまったのだった。
 検査慣れしている友人に訊くと、「そんなのは引っ掛かっても大丈夫、もし重篤なものだったら速攻で入院だ。連絡がないのは良い便り」と言う。そんなもんですかね。
 
 午前10時45分に検診センターの受付に書類を出す。11時に診察室に入り、先生と対面する。
 およよ。
先生の顔を見て驚いた。会社の先輩で、今は退職されて山野草の手入れをして悠々自適に暮しているはずのHさんが座っている。と思ったら、Hさんにそっくりな医者だった。年齢も70代のHさんよりも若そうだが、いや〜世の中にこれほど似ている人がいるとはねぇ。
 すらりとした優男なのだが目つきが怖い。三白眼なのだ。そしてものの言い方がぞんざいで、頭髪はぼさぼさ、顎髭はまばらに剃り残してある。まったく風貌を構わなかったまさにHさんだった。
うちの会社の人なら覚えていると思うけれど、10年前くらいに退職した名物部長で、苦手な人も多かったが、ファンもそれ以上に多かった人だ。その人の分身のような医者が目の前にいる。なんだか不思議な感覚だった。
 説明はぶっきらぼうで、画像表示をするパソコンの操作もおぼつかない。コメントの入力も3回に2回は間違える。それでもね、それがまた患者の緊張をほぐすんですな。とくにワシャの場合は、新入社員の頃からあちこち引きずり回してくれたHさんの分身のような医者だったので、とてもいいリラクゼーションの時間になり、なおかつ、診察に説得力があったので、よく理解ができた。
「まぁ大丈夫ということだね」
 頼もしい一言をいただき診察室を後にしたのだった。