美貌のひと

 昨日、本屋さん。新書コーナーで立ち読みをしていたら、中野京子『美貌のひと』(PHP新書)を見つけた。「恐い絵」シリーズの著者が、肖像画40枚を取り上げて、その絵に込められた物語を説く。表紙は、カールした黒髪、やや太い眉、大きな眼、柔らかそうな唇、頬、ラテン系の美女が毛皮のあしらわれた黒ずくめの姿で無蓋馬車に乗ってこちらを見下ろしている。一説には、トルストイの名作『アンナ・カレーニナ』の主人公のアンナ・カレーニナではないかと言われている作品である。
https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/h334013589
こんな美女に見つめられては、手に取らざるをえませんな。パラパラとページを繰ると、いけませんや(笑)、ミュシャの「サラ・ベルナール」が出てきちゃった。
http://www.mucha.jp/sarahgismonda.html
 必要なページが2カ所あれば購入すると決めている。だからお買い上げということになったのだった。ミュシャの絵のサラ・ベルナールはもとより美女に描けているが、その後のページに写真が掲載されている実物のサラ・ベルナールの美しさといったら……。こりゃミュシャも気合を入れて絵を描いたに違いない。

家に帰って、トルストイの『アンナ・カレーニナ』を読みなおしていると第1編18章に彼女の描写が出てきた。
《濃い睫毛のせいで暗いほどに見えた彼女の輝かしい灰色の眼は……》
 おおお、まさに表紙の美貌の人はアンナ・カレーニナであった。