落語はふざけているから面白い

落語はふざけているから面白い。

《前代未聞の襲名取りやめ 好楽の弟子・好の助、九蔵襲名に林家正蔵が直前で“待った”》
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180303-00010000-spht-ent&p=1
 三遊亭好楽の弟子の好の助が真打昇進とともに師匠の前名である「林家久蔵」を襲名しようという運びだったのが、九代目林家正蔵こぶ平)から「待った」がかかった。事情はこうである。正蔵こぶ平)は血統として七代目正蔵に連なる。要は林家という落語家の系統の正嫡と自身も周辺もそう思っている。
 江戸落語には「三遊亭」「古今亭」「金原亭」「林家」「春風亭」「柳家」「桂」「立川」など亭号はいくつもある。それらがあっちへいったりこっちへいったりしながら続いてきた。例えばである。五代目の柳家小さんの弟子には立川談志柳家小三治入船亭扇橋鈴々舎馬風などがいるが、みんな亭号が違う。
 三遊亭好楽は林家門下から出て、三遊亭円楽一門に加わった。だから元の林家の時の名前の九蔵を止められた。だけど落語の歴史をたどっていけば江戸寛政期の三笑亭可楽に収斂される。つまり「林家」も「三遊亭」も同じ穴の噺家なのである。
 そう考えると、「九蔵」というのは伝統の名前ではなくて、好楽の前名というだけのこと。「林家」という亭号使用がいけないのかも知れないけれど、落語の世界の話じゃないか、洒落洒落。それをまた正蔵がネタにして寄席で噺せば面白いじゃん。
「いやぁ、好楽さんに林家九蔵という名前も持っていかれちまいましてね。でもね、正蔵とか三平とかこぶ平とか……こぶ平も入れておきますけれども(笑)、そういった伝統のある名前じゃないんで。好楽師匠の前名っていうだけですからね、どうぞ、てなことであげちゃいました。まぁ『笑点』で一平もお世話になっていることですからね」
 とかね。

 どうも根岸の林家は落語を伝統文化にしたがっているようだ。それも悪くはない。そういったことも大切ではある。しかし、落語は面白くてナンボというところもある。九蔵などという名前はご祝儀で好楽師匠にあげてしまって、当代正蔵、当代三平は芸に精進すればいいのである。
 正蔵が名人と呼ばれた時に、その発言は重みを増す。残念ながら先代三平の妻がとやかく口を出すことではない。

 当代正蔵よ、立川志の輔柳家喬太郎春風亭昇太立川談春、そして義理の兄だった春風亭小朝あたりを凌駕してから宗家面をしても遅くはない。がんばって当代随一の名人になれ。