笑い三題

 昨日、仕事上で関係のある隣町の会社の補佐と打ち合わせがあった。まぁ大した話でもなかったのだけれど、ワシャの仕事の役に立つのではと、情報提供をしてくれる。ありがたいことなので、休日だったけれども、その話にしばし付き合った。
 その人、仮にSさんとしておくが、ずいぶん以前にワシャが企画部門に在籍しているときに交流ができた。企画というのはアイディア勝負、情報勝負のところがあって、ワシャのいた頃には、他社との情報交換にかなりの重きをおいており、担当者同士で頻繁に交流をはかっていた。そういった席で、その人と一緒になった。その時になにかのことでSさんを強烈に叱りつけたことがあった。ワシャが怒るとかなりきつい。でも、感情にまかせて相手を怒鳴りつけたりすることはない。大音声でまくしたてるが、心の一部分は醒めていて、冷静に自分の怒りを見つめているのだ。これはやっぱりクソガキの頃に、体をはった喧嘩をこなしてきたおかげだと思っている。だから微妙に間合いを計りながら相手を叱っていく。
 Sさんはそのあたりが理解できていた。普通のやつなら、あれだけ強烈に叱られれば、次からは来ない。さっさと「無駄な不快」からは尻尾を巻いて去っていく。うう〜ん、「無駄な不快」ではなく、当人が「無駄だと思える不快」なんだろうね。だが、Sさんはその次の情報交換会にもやってきて、ワシャの近くに座って、徳利でワシャを攻めてきた。その次も、その次もやってきて、ときにワシャにたしなめられながらも、懲りずに近くに座って、ワシャの駄話を聴いている。
 そういった変な男の話だったので、ちょいと傾聴する時間をつくって付き合っていたということ。
 それからが忙しかった。陽は西に傾き出している。先週はなかなか買い出しに行ける時間がなかったので、ビールやつまみが底をついている。このままでは干上がってしまう。それに探している本があるので、それも含めて豊田方面にでかけた。ここまでが前置き。

 ワシャはスーパーの酒売り場でビールを買い込んで、お菓子売り場に移動した。そこで高校生の女の子とその母親の二人連れにすれ違った。その時に思わず吹き出しそうになった。親子はまったく同じ顔をしていた。一卵性双生児くらい似ている。ただ母親の方が少し年齢を重ねた肌感が見えるだけで、背丈、ふくよかさ、髪型、表情など瓜二つなのである。今までこれほどまで相似形の親子を見たことがなかった。
 狭いスーパー内のことなので、またドリンクコーナーで出くわした。その時には「ハハハ」と声を出してしまった。それくらい微笑ましいのである。なにか素敵な発見をしたような心持ちというんでしょうかね。楽しい笑いが込み上げてきたのだった。
 そしてレジで。
 今日のレジのオバサンはプロだった。ワシャが肩にぶら下げていた買い物袋を「それお預かりしましょうか」と積極的に声をかけてくれて、カゴに設えると、レジ打ち(バーコードを読む作業)がめちゃめちゃ要領よく素早い、本物の仕事師だった。明らかに他のレジとの処理能力が違っている。ワシャがスーパー研究家(笑)として長年、レジのオバサンを見てきたが、最強のレジ係だった。ついついその手際の良さに微笑んでしまった。

 帰り道の県道。車を運転しながら大声で笑ってしまった。
 対向車線を黒い車が走ってくる。車高が低い。ドロドロと無駄なエンジン音が轟いてくる。それを見つけた瞬間に腹がよじれた。ワシャらも昔はワイドタイヤを履いてアブソーバーに細工をして車高を落して走っていたことがあったが、そんなレベルを超えたシャコタン(車高を落した車をそう呼んでいた)だった。それもタイヤが「ハの字」になっているんですよ。少しくらいタイヤが開いている車は見たことがあったけど、まさに「ハ」なのである。いやいや「ハ」より開いていたかもしれない。要するにタイヤが内側の角の一点でしか道路に接していないのだ。あれではブレーキは効かないだろう。その前にどうやって車軸に取り付けてあるのか、まったく解らん。若いって恥ずかしい。
 
 前の笑いはいい笑いだったが、最後のは嘲笑の大爆笑だった。