感動してください

 ワシャは昭和の中期の生まれである。世は高度成長期に入っていた。遅ればせであってもテレビ、洗濯機、冷蔵庫が、家の中に登場してきた頃である。
 そんな時代に先駆けて一本の映画が上映された。終戦後9年しか経っていないのに、これだけの映画を作り出せる日本人の底力はいかばかりであろうか。

七人の侍』である。
 言わずと知れた巨匠黒澤明の手による時代劇映画であった。
 手元に、キネマ旬報社の『日本映画オールタイムベストテン』という臨時増刊号があるが、その中でも小津の『東京物語』に次いで第2位に輝く大名作。娯楽性ということから言えば間違いなく日本映画の最高峰であろう。熱狂的小津ファンのワシャが言うのだから間違いない。また世界の映画監督の多くがこの映画に強い影響を受けてもいる。なにしろすごい映画ですよね。
 さて、この映画には当たり前だが七人の侍が登場する。
 島田官兵衛(志村喬)、これが格好いいのだ。軍師のような風貌と、沈着冷静ではあるが時にリーダーとしての凄味を見せる。この男の下ならば敗け戦でもいい……そう思わせる。
 片山五郎兵衛(稲葉義男)、林田平八(千秋実)、久蔵(宮口精二)、七郎次(加藤大介)、岡本勝四郎(木村功)、そして菊千代(三船敏郎)という個性的な面々を揃えて、絶対多数の野武士と決戦をする。
 豪雨の中、必死に攻めかかる野武士を迎え撃つ戦闘シーンは鳥肌が立つほど凄まじい。「戦闘シーンはちょっと」という女性向けには、若侍と村の娘のラブシーンもあるのでそちらを楽しんでほしい。それに、野武士に略奪された村の女の凄絶な美しさは、まるで能の舞を見ているようである。侍たちによる「動」と「静」、与平(左卜伝)や久右衛門の婆さま、女たちの「動」と「静」、これも見ものであるし、なにしろ日本人として見のがしてはいけない一作である。

 ワシャはクソガキだった頃(1975年)、駅前の映画館で雨の降るスクリーンでリバイバル上映の『七人の侍』を観たものである。これは凄かった。とてつもない感動をした。
 三船のアクションもいいし、志村の表情も見逃せない。宮口の抜身の剣のような殺気も見事だし、意外と知られていないけれど仲代達矢がチョイ役で出ているのを見つけるのもおもしろい。
 今、「黒澤明DVDコレクション」が出ていて、『七人の侍』も発売されている。今度、このDVD鑑賞を読書会に提案してみようかなぁ。