達磨さんが転んだ

 今日も朝起きると一面が白くなっていた。でも、昨日の方が降った量は多かった。ワシャは早朝から書庫にいるんだけど、足元からしんしんと冷気が上がってくる。石油ストーブ1台、電気ストーブ2台を点けているにもかかわらずである。環境原理主義の皆さん、地球は温暖化しているんじゃなかったんでしたっけ。

 昨日の朝のことである。晴れていた。一面の銀世界でまぶしいほどである。「わ〜い!」てなもんで、精神的にクソガキなワシャは、庭に出て雪を蹴散らして遊んでいた。座敷から庭を見ていた老親は苦笑していたので「相変わらずのアホだな」と思っていたに違いない。
 でもね、雪はうっすらとしか積もっていなかったので、雪だるまはできなかったのじゃ。

 バカなことをやっていると、すぐに出勤時間になってしまった。うっすらでも雪は雪、ところどころには凍っている場所もある。だからスーツは着ても、靴はスノートレーニングシューズを履く。格好としてはちぐはぐ感は否めないが、雪路をなめてはいけない。寒かったのでスーツの上にダウンベストを着込み、その上にコートを着て、達磨のようになってしまった。
 モコモコオッサンは、愛車の流星号(自転車)にまたがって雪の道をゆっくりと行くのであ〜る。ここらあたりがバカですな。雪道は自転車で走るのがもっとも恐い。そんなことは知っているはずなのに、自分だけは大丈夫、流星号なら安心だろうと多寡をくくって走り始めた。コーナーや坂道はことさら慎重にペダルを踏む。日陰は凍っている可能性があるのでゆっくりゆっくり、気を付けていたつもりなんですが、三度、角を回ったら忘れた。幹線道路に出た頃には通常モードで走っていた。
 さほどの積雪ではないが、ドライバーは白い道にスピードを抑えて安全運転だ。だから車は大渋滞。信号が変っても車は交差点に進入できず、東西南北すべての道路で排気管から水蒸気だけが上がっている。
 そこに「慎重に走ろう」を忘れたワシャの流星号がとおりかかった。なんだか四方八方から見られているようで、緊張するなぁ。
 ここに魔があった。
 横断歩道を渡り終わる直前の車道で流星号の前輪が滑った。ビルの日陰になっている場所がキンキンに氷っていた。流星号が右方向に離れていく。バランスを崩したワシャは宙を舞っている。すでに手はハンドルを放している。次の瞬間、ズン!という衝撃が体の左側面に奔った。横断歩道上で転倒をしたのだった。
 ワシャは車道に横たわっていた。左手で受身をとったものの、左脇を強かに打った。痛いっすヨ(泣)。でもね、痛いよりも交差点でびっしりと車が並んでいる状態での、派手な転倒なので、恥ずかしさの方がイタいっす(号泣)。
 でもね、ワシャは何事もなかったように立ち上がり、自転車を起こし、コートやズボンについた雪を払って、「なにかあったんですか」というように平然をよそおい、再び流星号にまたがったのだった。

 あ〜びっくらこいた〜。左の肋骨を強かに打ってしまった。こんな痛い思いをしたんだから、誰かに転倒の瞬間を撮影してもらえばよかった。夕方のニュースに使えたのに。

 笑い話ではない!咳をしても、欠伸をしても痛いのじゃ。