休むに似たり

 以前からどうもおかしいと思っていた。地球型の惑星はそれこそ宇宙にごまんとある。地球の近所にだって二万五千とあるだろう。でもね、この2000年くらいの間、宇宙人が地球に立ち寄った形跡がない。太陽系以外からなんの情報も20の世紀にわたって届いていないのである。宇宙に知的生命体は存在しないのだろうか……。

 それでね、最近、AIのことを調べていて、はたと気がついた。生命体が進化した場合、人類もその一類型であるが、恐竜型でもタコ型でも植物型でもいいんだけど、ある一定の進化をすると、どこかでアナログからデジタルへの革命が行われるのではないか。そして次の段階で人工知能に進化するのは必然だと思う。その人工知能が自ら学習し進化をするようになれば人間の知などあっという間に抜き去ってしまうことは、チェスの「ディープブルー」、将棋の「Ponanza」、「アルファ碁」で実証済みである。
 昨日の朝日新聞には、哲学者の森岡正博氏が「AIは哲学できるか」という文章を寄稿していた。すでに人工知能は「碁」まで極めている。それが、過去の哲学者のテキストをすべて読み込んで、すべて己のデータとしたとき、人工知能からは生半な哲学者よりも鋭い哲学的思考が呈せられるのではないか。
 森岡氏は言う。
《哲学的には、自由意志に基づいた自律的活動と、普遍的な法則や心理を発見できる思考能力が、人間という類の証しであると長らく考えられてきた。しかし、それらは将来の人工知能によっていずれ陥落されるであろう。》
 
 浦沢直樹の『プルートー』、原作は手塚治虫だが、この物語がAIを語っていておもしろい。天才科学者の天馬博士が鉄腕アトムを造ったのはよく知られている。その天馬博士がもう一体製造したのがアブラーだった。そして彼が憎悪で練り上げたのがプルートーであり、ボラーである。
 全8巻のコミックだが、AIの進化予測としては、かなり的中していると思う。アトムやその他の善良なロボットの存在、そして改心をするプルートー、最後にいいロボットになってしまう殺人ロボット「ブラウ1589」など、やや楽観に過ぎるとも思われるが、AIの今後を考える上で参考になるテキストだと思う。

 ちなみに、ホーキング博士はBBCのインタビューにこう答えている。
「完全な人工知能を開発できたら、それは人類の終焉を意味するかもしれない。人工知能が自分の意志をもって自立し、そしてさらにこれまでにないような早さで能力を上げ自分自身を設計しなおすこともあり得る。ゆっくりとしか進化できない人間に勝ち目はない。いずれは人工知能に取って代わられるだろう」
 映画「ターミネーター」の描いた未来もあるので、AIについて楽観ばかりではいけない。

 知的生命体はある一定まで進化するとAIを生み出してしまう。だから、知的生命体が星間を楽々と飛び越える技術を得る前に、惑星環境にとってもっとも害となる知的生命体をAIは絶滅あるいはコントロールするのではないか。だから、知的生命体は相互に交流することがないのか……などと下手のワルシャワは考えるのだった(笑)。