名古屋市美術館で「シャガール展」が始まった。下のURLに詳細がある。
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/chagall
ここに出ているのが『誕生日』というシャガールの代表作、シャガール28歳の時の作品である。絵に触れる前にその前提を書いておきたい。
22歳の時、故郷のヴィテプスク(ロシヤ)でベラという女性と出逢っている。この絵に出てくる女性なんですが、シャガールは一目で恋に堕ち婚約にまでいたる。しかしその後、シャガールは絵を学ぶためにパリに出てしまうので、ずっと離ればなれの生活となる。
6年後にようやくシャガールはベラをパリに呼び寄せて、一緒に暮すことができるようになった。その頃の誕生日の様子がこの絵なのである。
作品を見てみよう。
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/chagall
不思議な絵ですよね。画面の中心でシャガールとベラがキスをする。ただしシャガールは宙に浮いている。場所は彼らの部屋。シャガールの誕生日を飾るためにベラは花を買いに外出していて、今、もどったところである。ドアから入ってきたベラを見て、舞い上がるような思いでキスをした、その瞬間が切り取られている。画面の下半分は紅い。これは祝福の紅であり、シャガールの悦びの気持ちが込められている。画面の中のシャガールは宙に舞い、ぐにゃんと曲がってキスをしているけれど、男は好きな人にキスをする時に、こんな感じでぐにゃんぐにゃんになるのだ(笑)。それにシャガールの絵には時おり、宙を舞う人物が描かれているので、彼にしてみれば奇異でもなんでもない。普通の描写と言っていい。
久々に再会した恋人と自分の誕生日を祝う。その悦びを幻想的に抒情的に描いた詩的讃歌なのである。押し寄せるようなシャガールの悦びを感じてみたいなぁ。