だるまさんが転んだ

 昨日、名古屋市六番町のマンションの一室でプチ忘年会。ワインやビール、獺祭もあったなぁ。肴もチンジャオロース、クリームシチュー、生ハムなどがテーブルに並んで、みんな手料理なんだけど豪華なしつらえとなった。ワシャはもっぱら飲むだけ番長だった。
 ワシャの参加は宴になってからだけど、他のメンバーは昼過ぎから「哲学」についての勉強会をやっていた。なにしろ向学心が旺盛かつ優秀なメンバーばかりなので、ホントにアホのワルシャワではなかなか太刀打ちできない。飛び交う用語も、三つにひとつくらいはよく解らない。そういう時は聞き飛ばしておいて、知っている話題になったらガッツリと食いついていく、そういう作戦で議論に参画していた。
 哲学の話から数学の話に転回していった。なんで数学の話になったのかよく覚えていないけれど、ワシャの隣の人が「因数分解」とかの話をし始めて、おもしろくなかったので「その四字熟語は聞いたことがない。なにせ中学1年生の時から数学は選択していなかったので」と混ぜっ返して笑いをとり、話題を切り上げさせた。
 まぁそんなこんなで夜も更けていったわけですわ。
 午後8時くらいだったかなぁ。宴をお開きにして、メンバーのマンションを後にした。最寄りの地下鉄の駅が六番町なのでそこまで10分くらい歩く。夕べは比較的温かかった。風もなかったのでほろ酔いで歩くのが気持ちいい。でもね、ほろ酔いといっても足元がおぼつかないということではない。一緒に駅に向かっていたのは4人の仲間なのだが、みんなしゃきっと歩いている。酔っているというほどは飲んでいなかった……はずだった。
 ところがワシャが地下鉄の入口で転倒してしまったのだ。六番町のあたりは海抜が低い。だから地下鉄の入口に水の浸入を阻むための段差が造ってある。これに足を引っかけた。そのままバタリとコンクリートの上に転んだ。右膝を強く打った。鞄は運よく肩に掛けていた。どちらかの手に持っていれば両手で前受身が取れずに被害はもっとひどかっただろう。右膝の打撲、その打撲による裂傷、ズボンの右膝のところの擦り切れ、右掌の擦過傷、右膝から衝撃が腰に伝わっての軽度のぎっくり腰、被害はそんなところか。そのなかでも膝が一番ひどい。歩くのに不自由なのはもちろん、立ったり座ったり膝に力が入るとこれが痛いのだ。自転車を漕ぐときに膝を曲げるのにも痛みが走る。
 ううむ、こんなところで転倒するとは、ジジイになったものだのう。

 痛い膝をだましだまし六番町から金山に出て、そこでメンバーと別れて、ワシャはひとり東海道線に乗る。これが混んでいた。乗り口で人の流れが蛇行する。「なんのこっちゃ」と蛇行するあたりを見ると、乗り口入ったところの床に女性が床に尻をついて座っているのだ。この女が邪魔をしていたのか。それにしても乗客の皆さんは紳士淑女ですな。誰も何にも言わない。言うならワシャなのだが、ワシャは膝に重傷を負っていて、今はそれどころではない。とにかくその女を迂回して通路の奥まで入って吊革につかまった。電車が動き出し、束の間、金山の街の夜景を見送っていて、ふとさっきの座り込んでいる女の方を振り返ったのだが、え?その女は消えていた。
 だるまさんが転んだ。