貴重な出会い

 昨日、仏教関係の所用で隣の町に出かけた。その帰りに酒の肴を買おうと思い、スーパーに立ち寄った。

 さすがに土曜日、それも午後から雨が上がったこともあって、買い物客は多かったですな。

 ワシャは鮮魚売り場の刺身を物色していた。そうしたらね、夫婦連れが、刺身コーナーにやってきた。女性は50代半ばか。すらっとした美人で、少し水商売の匂いがする。男性を見る。その瞬間、ワシャは口を押えて刺身コーナーから、あわててミートコーナーのほうに移動した。

 その夫婦から10mくらい離れただろうか。そこで「ハハハ」と声を出して笑ってしまった。

 刺身コーナーの男性である。どちらかというと小柄なほう、体格としては小太りといったところ。ノースリーブのTシャツを着、上腕の筋肉を見せつけている。年の頃なら60代、顔のしわを見ると70代の可能性もある。

 ワシャがウケたのはそんなところではない。彼のヘアースタイルに驚いた・・・というより感動した。その感動にほっこりして思わず笑ってしまったということ。くれぐれも言っておくが、嘲笑ったとか、バカにしているという類でなく、久々に楽しくなって笑ったのである。

 彼は見事なリーゼントをきめていた。

 皆さん、リーゼントというヘアスタイルを知っていますか?

ビー・バップ・ハイスクール』の突っ張り高校生の加藤浩志くんの髪型ですね。

https://www.netflix.com/jp/title/81019446

 向かって右側、横顔で写っている高校生が浩志くんで、浩志くんのほうが格好いいリーゼントです。

 でもね、スーパーであったお爺さんといったほうが近い人のリーゼントはこんなものではなかった。「ポンパドール」という前髪の膨らみ、ワシャらの頃は「庇(ひさし)」と呼んでいたが、これをどれだけ前に伸ばせるかで競っていたんです。この庇を固めるために、ロレアルパリのエルネットサテンというヘアスプレーを1週間に1本使ってしまったんじゃ。

 その頃の基準からすると浩志くんの庇はまだまだ甘い。それよりも昨日の人のほうが5㎝は長く前に出ている。すんばらし~。サイドの髪もポマードで後方に流しているし、後ろ髪も少し長めで襟首を隠しているところがよろしい。完璧なリーゼントヘアーだった。

 これほどまでのリーゼントを見たのは、何十年ぶりだろう。ワシャの意識が一気に高校時代へとトリップしてしまった。でね、高校時代の基準から見ると、そいつ(ワシャの気持ちも高校生になってしまったので「そいつ」と呼ばせてもらう)の表情はいかにもへぼそうだった。だけどリーゼントだけはごつかったので、思わず楽しくなってしまたんです。高校時代なら間違いなく「ねえ、きみきみ~」と声を掛けていただろう。

 ホントにそうやりそうになった。だからあわててミートコーナーのほうに離れたのだ。その刹那でのワシャの気持ちの揺らぎのようなものに自嘲したと言ってもいい。

 ミートコーナで楽しく笑った後、ワシャはそのカップルを追いかけ。だって、もっとあのリーゼントを見たいからね。

 後ろ姿もいい。小柄なんだけど、リーゼントだから頭でっかちに見える。派手なバックプリントにダボダボのジャージ、ビニールの草履だなんて、昭和50年代のツッパリそのままではないか。楽し~!

 5mくらいの距離をおきながら追跡したんですが、総菜コーナーでレンコンの天ぷらに目を取られた隙に見失ってしまった。レンコンの天ぷらをカゴに入れると、急いで後を追った。そうしたらね、お酒コーナーで前から来るそのカップルと鉢合わせになってしまった。これはびっくりしましたぞ、ワシャはね。でもリーゼントは驚いた様子もない。当然、出くわしたのは普通の人(ワルシャワくん)ですから。ただその時の表情がよかった。ぶつかりそうになったワシャを睨んで、「なんじゃぁ」とアヤを付けそうな感じで唇を突き出した・・・わかりますかねぇ(笑)。

 その顔を見て、ワシャは思わず「サインください」と言いそうになってしまった。さすがに我慢しましたが。

 結局、そのリーゼントくんに遭遇したため、あまりのうれしさに買い物に集中できず、レンコンだけを買って帰路についたのでありました。あ~楽しかった。