面従腹背その2

 昨日の仕事帰りにいつもの駅前の本屋に寄った。そこで「SPA!」と「ぱかっ」を買う。
「SPA!」にはまた前川喜平氏が登場する。どうもこの人、いろいろなメディアに出過ぎのような気がしてならない。「権力者にたった一人で立ち向かう正義の人」を醸し出そうとやっきになっている。

 昨日の続き。
 ただね、公務員という立場を考えれば、面従腹背は時に仕方がないことだと思う。場合によっては面従腹背も必要ではある。その点は同情しつつ、でも、それを座右の銘にしてはいけない。座右の銘ですぞ。表面では服従するように見せかけて、陰にまわるって誹謗反抗する、それが、その人間のもっとも大切な戒めの言葉だとしたら、そんな奴は信用できない。
 それも、38年も面従腹背で公務員人生を送ってきたと言って憚らない前川氏。そんな人生でよかったのか。何人の上司に仕えてきたか知らないけれど、その人たちをだまし続けてきた、そんなことで自分自身が納得できるのか。
 出会い系バーに行ったっていい。官僚だからといって聖人君子じゃないからね。だが、面従腹背座右の銘として上司を騙すことを38年も続けてきた男のことだから、国民に対しても面従したふりをして腹背しているんとちゃうか?と思われても仕方がない。
 そして本当に面従背反していたことを百歩譲るとしても……。ううむ、ここからは「AERA」を引こう。
面従腹背の仮面を外した時、役人から個人に戻った瞬間、燃え上がった炎が、30余年溜まっていたガスを爆発させ、安倍一強の政治構造まで揺るがすエネルギーになったのかもしれない。》
面従腹背でガスが溜まったわけでしょ。つまり自分に嘘をつき、周囲に嘘をつきまくり、だから糞づまりになって、腹にガスが溜まってしまった。38年も腹の中に汚物をたくわれば、最後っ屁も臭いわなぁ。
 それでも漢(おとこ)はイタチではないので最後っ屁をかまさない。腹を切ってでもガス抜きをする。ファブリーズを一瓶使ってでも他者に臭みを感じさせることはしない。仮にも事務次官という官僚機構の中の最高峰まで登り詰めたのだろう。その時に上を諌めずして、退任してからの言いたい放題、それは醜態以外のなにものでもなかろう。
 前川氏、文部科学省の旧態依然とした天下りがばれて引責辞任をした。でもちゃっかりと数千万円の退職金はせしめている。退職をしてからは出会い系バーに通うことなく、夜間中学校でボランティアを始めたんだとさ。
 長続きするといいなぁ(笑)。これを10年やり続けられれば本物だろうけど……。

 1962年当時イギリスの陸軍大臣だったプロヒューモ男爵はスキャンダル事件に巻き込まれ、議会で一度だけ偽証をしてしまった。その責任を問われ大臣を辞任し、公職からも身を引いた。その後、彼は一切の抗弁をせず、ロンドンの貧民救済施設で働き始める。オクスフォード大学出の貴族、女王陛下に側近する大臣まで務めた人物がである。彼は施設の清掃作業員であった。アル中の反吐や汚物の掃除もしただろう。腐敗臭のただよう皿も洗ったろう。彼が国を裏切ったことに対して自らに課した罪滅ぼしだった。
 貴族や高い地位にあるものは、地位に対する責任がある。ノブレスオブリージュ。彼は生涯にわたって事件に関する言い訳をしなかった。黙々と貧民施設の仕事を続けるだけだった。彼が名誉回復するのは何十年も後のことである。自らの偽証に課したノブレスオブリージュであった。

 前川氏も38年という面従腹背の官僚人生を清算したいと思うなら、短期間にマスコミに出て言い訳を放(ひ)り散らかすのではなく、10年でも20年度も無償の教育ボランティアを続けていけばいい。退職金もある。家に資産もあるんだ。

 汚名を晴らしたいなら安易な道は選ばず、日本のプロヒューモを目指せ。