凸凹を楽しむ

 昨日、仕事帰りにいつもの本屋に寄る。閉店時間のせまる午後6時半ぐらいだったので、客はワシャしかいなかった。広い本屋で、ワシャだけがうろついていると常連の店でも気が引けますな。奥さんはいなかったけれど書店員は3人いて手持無沙汰にしている。ワシャがいなければ雑談でも楽しめるのに……。
 その前日もこの本屋さんを訪れていて、6冊の本・雑誌を購入している。だから、今日(昨日ね)は取り立てて買いたい本も見当たらない。しかし急きょ飲みに誘った友達が来るまで(本屋で待ち合わせしたのじゃ)、時間をつぶさなければならない。

 お!そうしたら昨日(一昨日ね)はなかった本がワシャのセンサーに触った。松本泰生『東京坂道図鑑』(洋泉社)である。東京23区内の142の坂がイラストと写真で紹介されている。タモリさんなら大喜びしそうな一冊である。
 おお!のっけから御茶ノ水駅界隈の「淡路坂」「紅梅坂」「幽霊坂」ですか。このあたりは神保町が近いのでよく歩きましたぞ、走りましたぞ。
「九段坂」は上京すれば歩く定番中の定番で、もちろんケッタでも走ったものだ。あるとき目白通りを九段坂に向かって歩いていたら、今は亡き河上和夫さん(元東京地検特捜部長)とすれ違いましたぞ。
 皇居白鳥堀脇を抜けて江戸城天守台跡に向かう坂が「汐見坂」。季節のいい時期には気持ちのいい林間コースである。霞ケ関2の交差点で西を見上げると「潮見坂」。この坂もお巡りさんに睨まれながらポクポクと散歩したものだ。
 おおお!「三宅坂」。大東亜戦争まで陸軍参謀本部が置かれていたところで、「三宅坂」と言えば「参謀本部」のことだった。現在では、国立劇場などがあるので、やっぱりよく散策する坂なのである。
「乃木坂」は、春に「ミュシャ展」で行ってきたばかりじゃ。忠臣蔵の「南部坂」雪の別れ。倉本聰さんの『拝啓、父上様』の舞台は「神楽坂」。15年前に希望を胸に登った「宮益坂」。オーチャードホールからの帰り道に渡った「道玄坂」。大名時計博物館脇の「三浦坂」懐かしいなぁ。
「スペイン坂」「なんだかの坂」「まむし坂」「どりこの坂」……行っていないところも山ほどあって、ううむ、涼しくなったら東京に行きたくなりましたぞ。坂道巡りがしたくなってきたのだった。