秋の落語会

 春風亭昇太の弟子の昇々(しょうしょう)はイケメンだ。嵐の二宮くんにちょっと似ている。声もいい。実際に意識しているのだろうが、甲高い声は二宮くんそのものと言っていい。マクラの中で歌舞伎の「鳴神」を演じたが、目をひんむいて見栄をきると、これが市川海老蔵になってしまう。野太い声音までクリソツだ。よく勉強しているし、器用な若手が出てきた。31歳の二つ目、こりゃこれからが楽しみだ。
 噺は「湯屋番」だった。二宮くんに似ているから、道楽者の若旦那が活き活きと描写できている。若旦那物はけっこう昇々のはまり芸になっていくのではないか。昇々の噺で、「火事息子」が聴きてえなぁ。テレビに毒されず古典をきっちりと仕込んでいけば、いい落語家になると思いますよ。
 昇々がドカンドカンと笑いをとるので、その後の鯉昇がやり難そうだった。いつもなら高座に上がって、だらりと座り、客席を眺め回すだけでドンと笑いが起きるのだが、さすがに昇々で笑い過ぎた客席は、常連がクスクスと笑うのみである。
 ここはさすがに鯉昇師匠。小ネタを積んで客の意識の集中をはかりつつ、ぼちぼちと鯉昇ワールドに引き込んでいく。噺は「持参金」。持参金付きで嫁いでくるその女の描写が凄まじい。ここで客は笑い転げる。

 古今亭文菊もよかった。37歳にも関わらず、高座の姿に風格さえ漂う。顔はあご短めの橋の助、頭をさっぱりとそり上げて、細身の若い住職といった風情だ。演目は「青菜」。大旦那も奥様も植木屋もカカアもきっちりと演じ分けている。噛むこともなくとちることもない。正統派と言っていいだろう。

 期待できそうな若手が登場してくる。落語はますますおもしろくなり、目が離せなくなってきた。