一昨日の夜、「さんまの東大方程式」という番組をやっていていた。現役の東大生40人がスタジオに集められて、さんまや芸能人にいじられるという、まあどうでもいいバラエティーだった。「病気じゃないのか」と思えるような変な学生も混じっていたが、それにしても東京大学である。腐っても鯛。記憶力の世界では日本でトップの集団であろう。この子たちが将来の日本を背負っていくのだろうが……ちょっと心配になってきた。鯛でも腐ったら食えない。
そこへこんなニュースである。
《政務官、被災地の水たまりおんぶされ渡る…謝罪》
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160910-00050115-yom-pol
務台俊介(むたいしゅんすけ)内閣府政務官。東大法学部を卒業後、自治省に入庁し、その後、政治家に転じた人である。日本のエリートであることは言うまでもない。しかし惜しい。ここでおんぶされたら晒されることは確実だよね。どうして優秀な頭が、そこに考えが及ばないかなぁ。
映像を見れば、防災服を着ている。東京から岩手まで来るのにずっと防災服ということはあるまい。どこかでスーツから着替えたに決まっている。靴を見れば黒い運動靴である。ちゃんと革靴から履き替えている。
だったらさ、テレビカメラが何事か起らないかと待ち構えているのである。ちょっと機転の利く人なら(小池都知事なら)、ジャブジャブとそのまま水の中に突っ込んだことだろう。
おそらく務台政務官、自身が長靴を履いていないので「どうしようか」と逡巡していたに違いない。それを世話好きな県の職員が「おぶって渡りますから大丈夫です」とでも申し出たのだろう。「あ、そう」てなもんだ。合理的に計算すれば、わずか数メートルのことに過ぎない。県の人に力を借りれば運動靴もぬらさずにすむ。
このご時世に、政務官が「余を背負って向こう岸まで渡らせよ」などと下命するわけがないし、それほど傲慢にも見えない。おぶった人も好意であろう。それに食いつく連中がいるということに少しだけ頭が働けばよかった。それだけの話である。
短時間での応用、決断ができない。それが受験秀才脳なのだろう。
冒頭、さんまにいじられていた変な東大生は、子供のころから「考えて行動をする」ことを躾けられてきたという。これは「目の前に出された課題を考えて」ということでしかない。世間というのは、その課題のむこうの不確実なところへは思考が進まなければ、まともな大人にはなれないよ。
務台政務官の間抜けな姿を踏まえると、脳科学者の中野信子さんのこの発言が秀逸だ。
「東大に入るのは、官僚になる以外のメリットはない」
まぁ「おおかたの東大生は」ということなのだろうが。