窓口の風景

 友だちからこんな話を聞いた。友だちは若い女性ね。その人は某社で窓口を担当している。いろいろな関係で日に何十人もカスタマーが窓口を訪れるそうな。
 こんな客がいた。会社から何かの通知文が行ったらしく、それは未納分の支払い請求のようなものだった。その客を仮にカスさんと呼ぼう。その日は窓口が混んでいて、カスさんは15分程待たされていた。待っている時から声が出ていた。「待たせんじゃねーよ」「さっさと仕事やれよ」とかね。
 友だちは「ぜったいにヤーさんでした」と人差し指で自分の頬に線を引いた。
「白いジャケットに白いズボン、頭は丸ボーズでサングラスを掛けていました」
 プッ!
 ワシャは思わず吹き出してしまった。ダハハハハ、そのまんまのカッコウではないですか。言ってしまえば山田洋次監督の「幸せの黄色いハンカチ」(1977年)に出てくるチンピラ(たこ八郎)のファッションそのままである。え、まだそんな希少種が棲息していたの。ある意味ですごいな。40年前でも本物のヤクザはそんなダサいカッコウはしなかった。今は暴対法が厳しいので、暴力団は目立たないようにしているのが実情だ。例えば、生活保護の窓口でも、その筋の人は神妙にしていると聞いた。15分待たされて大声でがなり立てるようなのは素人と言っていい。それに「ぶっころしてやる」なんて絶対に言わない。言った瞬間に暴対法で捕まってしまうからね。
 本物は1円にもならないことで、大声で喚いたり、暴力を振るったりしない。モノホンはもっとクレバーだ。