舛添氏の本棚

 舛添知事の書籍購入については思うところがあって、月曜日に公表された調査報告書を詳しく見ている。舛添氏(政治団体)が購入した書籍をつらつらと眺めてみると、なかなか興味深かった。舛添要一という人間の読書傾向がよく解る。1300冊も公開されると、ある意味はずかしなぁ(笑)。
 とにかくこのラインナップは、どう見ても舛添氏の「教養」を補完するためのものである。これを政治活動費ということで落とせるのだから「政治家となんとかは3日やったら辞められない」と言われる理由がよ〜く腹に納まるわい。
 ざっとだが内容を見てみよう。報告書にリストアップされた書籍は1300冊。その中に直接政治活動につながると思われる本ももちろんある。
『明解選挙法・政治資金法の手引き』
『日本の税制』
『よくわかる社会保障と税制改革』
『消費増税では財政再建できない』
などなど。
 これらだけが並んでいるならば、舛添氏は堂々と立っていられたのだが、そうは問屋が卸してくれない。ニュースでたびたび取り上げられる
『ピザ釜・パン釜のつくり方』
『江戸流そば打ち』
 この系統の本はどう説明しても政治活動につながるとは思えない。しかし、この手の本はこの他に
『ピザの本』
『ピッツァ』
『豪快ダッチオーブンテクニック』
があるくらいのもので1300冊から見ればごくわずかである。それでも政治活動費に計上するのはおかしいのだけれど、マスコミが偏向して報道するほど目立ってこれらの類の本が多いわけではない。
 むしろもう一つ言われている絵画関係本が非常に目を引く。平成24年には集中的に150冊余の美術本を購入している。これはもう「教養」をこえて「趣味」の域に達しているように思える。画家の展示会の図録を買うとともに、その画家の自伝などを購入している。
高田博厚大回顧展』、『高田博厚
『生誕100年小出墫重展』、『聞き書き小出墫重』
『麻生三郎展』、『麻生三郎全油彩』
『福田平八郎を偲ぶ会』、『現代の日本画3 福田平八郎』
などなど、特徴的な買い方をしている美術関連本が170冊もある。どうひいき目に見ても、これは政治活動ではないでしょう。ある画家の展示会に行くために事前勉強用に購入しているとしか考えられない。なんのためかって、展示会に行って、主催者側に「高田博厚ってさぁジャン・コクトーとも付き合いがあってね……」とか、己の知識をひけらかすためだけのような気がする。このやり方がまかり通れば、「釣り」でも「競馬」でも「ゴルフ」でもあらゆる趣味が「政治活動」で許容されることになる。みみっちい。いじましい。さもしい。
 とはいえ、少しばかりのシンパシーも感じる。
司馬遼太郎リーダー論』、『玄洋社・封印された実像』、『高杉晋作の革命日誌』、『龍馬史』、『昭和陸軍の軌跡』、『佐久間象山』、『北一輝』、『中国が死んでも認めない捏造だらけの中国史』、『愛と欲望のナチズム』、『銃・病原菌・鉄』、『清水次郎長』、『福田恒存』……みんなワシャの本棚に収まっていそうな本ばかりだ(笑)。もちろんワシャは当たり前だけど全部自腹で買っている。せこい舛添氏とはまったく違う。
 勝谷誠彦さんが言っている。
《カネなんて返せばいいことであって、舛添さんにとってはそんな痛みではあるまい。何よりも痛いのは「趣味が暴露された」ということだろうと私は考える。私なら耐えられない。暴露されるくらいなら先に辞任をする。それを選ばないのが舛添要一という方だと思う。自分の趣味がどの方向にあるかから、家族の嗜好までバラされたわけだ。これは人間としての屈辱だ、と感じない舛添さんだから舛添さんをやっていられるのだろう。》
 昨日の夜、やっていた映画「007/ガジノ・ロワイヤル」でジェームズ・ボンドが「無神経な男ね」とか言われていた。たしかに男はある程度無神経な方がタフなのかもしれない。そういった意味からいえば、舛添氏はタフな野郎だな。