ヒゲの隊長

 昨日、某所で講演会があった。登壇したのは佐藤正久氏。ヒゲの隊長で有名ですよね。講演後に少しお話をする機会があった。その時にサインをしてもらった『安全保障の授業』(ワニブックス)を友だちに見せたのだが「ふ〜ん」という反応しかなかった。う〜ん、佐藤さん、一般的にはまだ知名度が少ないか(笑)。自衛隊関係者には人気の国会議員なんですけどね。
 さて、佐藤さんの講演である。まずは21年前の阪神淡路大震災の話から始める。佐藤さんは京都の福知山連隊長だった。地震発生の段階で大被害を予測し、部隊を兵庫県境まで進めるが、県の境界を一歩も越えられない。県知事の要請がなければ、その県に入ることすらできなかった。仕組みが自衛隊を縛っていた。
 今回の熊本地震でもそうだった。北海道の部隊が本州に進もうと函館までやってくる。本州へ渡る陸路はないわけだから、フェリーを使うことになる。しかし、函館から大間に渡る市民は平時である。どれほど被災地に急ぎたくともフェリーに空きがなければ自衛隊の車両は乗船できない。個人の権利のほうが優先される。一刻も早く現地に赴き被災者救助をする、そんなことは当りまえだと思えるのだが、自衛隊の行動には手かせ足かせがはめられている。
 災害救助ですらこの現実なのである。これが国防という話になると、さらに難しくなる。そこで後半に南シナ海支那中国の状況の話もしてくれたが、日本のシーレーンを完全に支配しようとしている彼の国をあまく見てはいけない。田嶋陽子の言うように「話し合えばわかるのよ〜」では絶対にない。すでにベトナムの目の前のパラセル群島には支那の軍事基地が出来てしまった。マレーシアの中海にあるスプラトリー諸島にも軍事施設が出来あがった。スカボロー環礁に軍事拠点を造ることができれば、三角形の面的軍事エリアを支配でき、こうなると防衛のための艦船は南シナ海に許可なく入れなくなってしまう。日本のタンカーや輸送船が支那海軍に襲われようが、海賊の餌食になろうが、手は出せない。話し合ってよ〜福島瑞穂さん。
 さて、佐藤さんがもっとも憤っていたいのは、辻元清美衆議院議員であった。あれだけ自衛隊の海外派遣について反対しておきながら、自らが営業するピースボートという客船はソマリア沖で海賊から身を守るために、自衛隊に泣きついてきたという。もちろん自衛隊は、組織存亡にかかわるような不利な反対意見を言った議員の営利団体でも日本人である限り警備をする。その健気さはいかばかりであろうか。
 というような話を、大柄ではないが背筋の伸びたいい男が語ってくれたのだった。