残念な宴

 いわゆるチェーン店の居酒屋である。6人の個室に7人が詰め込まれた。5000円飲み放題コースをたのんである。ワシャは、この「ただ飲めればいい」という飲み方が嫌いだ。幹事としては、5000円と決まっているので、集金、支払いが楽だし、どれだけ飲んでもいいわけだから、酒飲みにはうけがいい。今回も2人OBの方が参加されていて、彼らが「その手の飲み放題の安い居酒屋がいい」ということでそうなった。
 まず生ビールと出来合いの総菜が三品並ぶ。乾杯をして飲みはじめるとすぐに刺身がでる。刺身なら熱燗がいい。注文をすると、まもなく化学の実験に使うようなブルーのガラス瓶が出てきた。およよ、これが熱燗だった。お猪口はというと、同じブルーガラスのコップのような代物で、こんなので酒を飲んでも美味くもなんともないわさ。刺身も生臭く、山葵はまったく風味がない。味噌仕立ての鍋も出た。あらかじめ鍋に具材を入れてあって、それをテーブルのカセットコンロで煮て食う。調理員は、具材と汁を鍋に入れるだけ。手がかかってない分、食う時に海老の皮をむいたりする手間がかかる。また、鍋一杯に汁を満たしてくるから、熱を加えるとどんどん吹き零れる。ポテトフライも芯が冷たい。サラダにしてもカラアゲにしても、美味そうなものはなにもなかった。まあ、食べたいものを注文できないのだから仕方がないのだけれど。
 30分くらい我慢していたかなぁ。どうにも食えないものばかりだったので、幹事からメニューをかりた。そこで、別注で「湯葉」や「たこわさび」などをもらった。これらもたいした味ではなかったが、それでも生臭い刺身よりはまだいい。
 ドアしか開口部のない狭い部屋で4人がタバコを吸った。OB2人もヘビースモーカーなので止めようがない。ワシャらは燻製のようになりながら酒を飲み続ける、という間抜けな図式になった。
 どうでもいいけど、気の利いた普通の居酒屋に行きたい!一品一品オーダーしながら、品のいい猪口と徳利でチビリチビリとやる。たまに店主と食材の話なんかをしながら、ゆっくりと時間を過ごす。
 そういう飲み方が、やっぱりいい。