大手ゼネコン

 大型マンション傾斜問題で、女優の松井一代さんがコメントしていた。10年前のことである。自宅マンションの(購入金額3億円)の欠陥を発見した松井さんは、自分で調査をした上で、大手ゼネコンSを相手取り原状回復を要求した。これが大変な闘いだったそうである。大手ゼネコンSは絶対に責任を認めなかったという。そりゃそうだろう。大手ゼネコンまで肥大化した組織になると、ある意味でお役所などよりも官僚的な風潮が強くなる。ゼネコンの鈴木建設を想い出してほしい。専務以下の保守的なことよ。営業3課の佐々木課長の小心さは、適当に生きる浜崎伝助と対照的だった。あれは映画ゆえのディフォルメではなく、ライターがきっちりと大手の状況を踏まえた上でのシナリオとなっている。
 おそらく今後、全国のマンションや施設から欠陥が発見されるだろう。大手ゼネコンが儲け以外のことを考えるわけがないのだから、手を抜く、品質を落とす、下請けに丸投げしたに決まっている。
 10年前に構造計算書の偽造が問題になった「姉歯事件」というのがあったが、当事者の方は未だに傷を負っていると思うけれど、マスコミなどは半年もすれば口の端にものせなくなった。あるいは大手ゼネコンからの広告費に支障が出るので、早々にニュースから外してしまったとも言える。そこに誘導され多くの国民も忘れ去っていた。体裁のいい大手不動産会社のCMに洗脳され、マンションブームに火がついたのはご案内の通りである。
 今朝の朝日新聞の社会面に「マンション疑心暗鬼 傾斜問題、商戦に冷や水」という記事があった。我々は少し水をかぶって頭を冷やしたほうがいいと思う。ブームにのせられてはいけないのだ。性悪説ではないけれど、建築過程をまったく見ずして、業者を信用し、何千万もの買い物をするのは怖い。大企業の経営陣は鈴木建設のスーさんのような社長ばかりではないのだ。
 なにしろ大企業はただものではない。いい人が集まっても巨大な組織になると必ずや別物に変貌する。その化け物を相手に孤軍で奮闘した松井さんは大したものだ。