精神的な裕福

 低所得よりも怖いのは「精神的な貧困」だという学者がいる。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150808-00908764-sspa-soci
「金銭的な貧困」も「精神的な貧困」も避けたい。どちらにしろ「貧困」というニュアンスが嫌だなぁ。
「老人ホームの調査をする際、たむろしておしゃべりしている女性に対して、男性は独りぽつねんとしている姿を目にします。別に『男もおしゃべりのスキルを』と言っているわけではなく、“独りでいても孤独を感じない”ということが重要です。これは“他人志向型”――つまり他者からの評価を価値基準とする出世競争に邁進してきた人ほど陥りやすい。精神的貧困を避けるためには、自分だけが楽しめる価値観を持った、“内部志向型”の人間を目指すべきです」
 社会学者の阿部さんの言。
 そうかなぁ。事例が型にはまり過ぎているような気がする。女性だって独りぽつねんとするだろうし、男性だって釣りの話で盛り上がる時もあるだろう。
「独りでいても孤独を感じない」って、それはかなりの達人でなければ無理だろう。道元良寛じゃないんだから。

 日曜日の朝「ボクらの時代」という鼎談番組がある。メンバーが揃うとおもしろい。先回は、秋元康(作詞家)、小室哲哉(音楽家)、浦沢直樹(漫画家)の三人だったので、年齢も近いこともありとても興味深く聴かせてもらった。
 秋元さんだったか「クリエイトというのは孤独な作業だ」と言ったことに対して、他の二人も大いに同意していた。「独りでいても孤独を感じない」というのは、高僧もしかり、その道で功成し遂げた人でなければなかなかその境地には達すまい。そういった精神的ステージの高い人たちでも、ふっと里に下りて、里の子供たちと手毬をしたくなるのである。さっきの学者の説にもどるが、凡夫にそれを求められてもなぁ……と思う。
「ボクらの時代」をもう少し引っ張る。
「やりたいことはまだあるの?」という問いに対して、各人がこう答えている。
浦沢「手塚(治虫)さんが60歳、藤子F不二雄さんが63歳で亡くなっている。だからいつもこの作品が最後だと思って描いている」
小室「ワールドツアーがやりたかったんだけど、この年齢ではね。なかばあきらめているんだけど」
秋元「今、やりたいことがないというのが悩みなんだよなぁ」
 三人の話を聴いていると、秋元さんと浦沢さんはポジティブなのだけれど、どうしても小室さんがネガティブ思考にように感じる。
「なにがターニングポイントになったの?」に対して、秋元さんが「美空ひばりさんに歌詞を褒められたとき」、浦沢さんが「作品の『モンスター』が認められたとき」と明確に答えた。
小室さんはというと、「『レボリューション』がターニングポイントかなぁ……」と消え入りそうな声で言う。
 それを受けて秋元さんが「名曲だよね」とつぶやく。小室さんはその言葉に微笑んで「名曲かぁ……ありがとうね」とボソッと応えた。