名人戦

 2日前に「マツコの知らない世界」に小室哲也さんがゲストとして出演していた。番組の内容はどうでもいいのだけれど、その時の小室さんは「つんく♂」がライバルだと言った。そりゃそうだ。同じ時代を生きて、今も日本の音楽界を牽引している。どちらも音楽界の名人と言っていい。そして小室さんは続ける。「宇多田ひかるが登場してきたときに、作詞の概念を変えられた」新たな才能の出現により、自分の老いたことを自覚し認めたのだそうな。名人は名人を知っている。

 夕べの「プライムニュース」。国家基本問題研究所理事長でジャーナリストの櫻井よしこさんと国際政治学者の三浦瑠麗さんが出演していた。どちらも論客として、他の評論家、学者と一線を画している。その二人がまさに囲碁名人戦のような、ボクシングの世界王座決定戦のような論戦を繰り広げた。どんな論客に対しても余裕綽綽の櫻井さんであるが、昨日は三浦さんにかなり追い込まれた。いつもの笑顔は消え、顔はやや疲れているようだ。風邪を引いて声が出ない状態で出演したこともあったが、その時ですらお水を飲みながら相手を論破したものである。それが昨日は違った。日韓の相互理解について「韓国の何人ものジャーナリストとも意見を交換した」という櫻井さんに対し、「もうロートルの時代ではない。若い世代に交代して日韓問題を考えていかなければ」と言い切った。記憶で書いているのでこのとおりではなかったかもしれないが、こんなニュアンスのことを櫻井さんの発言の直後に放った。これは櫻井さんにとって不快だったのだろう。それから櫻井さんの微笑みは消えた。次世代の名人が台頭してくる。「世代交代」を垣間見た。

 この記事がおもしろい。おもしろくないけど興味深い。
《元アメリ海兵隊員「今の日本はイラク戦争前のアメリカと酷似しています」》
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170109-00008852-jprime-soci&p=2
 元海兵隊員に「日本の憲法9条は希望の光。70年以上も戦闘をしていない記録をみなさんで守り抜いてほしいです」と言わせている。まぁ海兵隊にもいろいろな思想の人間が所属してきたわけだから、「平和教」の海兵隊員が居てもいい。記事前半の戦闘の際の話は具体的である。
「テロリストがいるとの通報を受け踏み込んだ先は一般家庭がほとんど。恐怖のあまり失禁した少女の叫び声が今も耳に焼きついて離れません」
「戦闘に入れば敵と味方の区別は困難。両方に死者が出ますし、仲間からの誤射で亡くなる兵士も多い。一般市民も巻き込まれます」
 そのとおりだと思う。戦闘というのは彼我ともに地獄なのだ。そして元海兵隊員は後段にこう言う。
「今の日本を見ていると、国のリーダーが危険をあおって恐怖心を高め世論を操る手法が9・11後のアメリカとよく似ています」
 似ていない。そもそも軍事力を世界展開しているアメリカと日本がおなじ状況にならない。ブッシュ大統領と安倍首相では持っている軍備が違うのだ。
「中国や北朝鮮の脅威が強調されていますが、考えてもみてください。狭い土地に54基もの原発が並び、地震リスクの高い、天然資源がない国を征服したところでどんな利益が得られるのか」
 確かに日本は原発地震・無資源大国である。しかし征服して利益がまったく得られないとはこの元海兵隊員、なにもお勉強をせずに日本まで来ているのかな。世界のGDP第三位で、高いレベルの技術を持っている。その技術を支える国民は極めて真面目である(もちろんある一定の割合の人がということ)。そして国土の7割は森林に覆われ、きれいな土壌と豊富な水に恵まれている。幕末に日本を訪れたヨーロッパ人は「神はどうしてこんなに不平等なのだ」と嘆いたほどである。
 極東の貴石のような国が「魅力のない国」にしか見えないとすると、この元海兵隊員、現実がよく見えていない。そもそも地政学を理解していないのではないか。それでいろいろな発言をしているとすると、イラク従軍記も眉唾なのかもしれないね。なにしろ左系の人は話を盛りたがるから(笑)。

 こんなの胡散臭い報道がはびこっている以上、櫻井さんにはまだまだ論陣をはって頑張ってもらわないと。