ウィーン会議

「会議は踊る」という言葉を残した国際会議である。フランス革命ナポレオン戦争後のヨーロッパの秩序を再建し、領土分割を目的として開催されたが、各国の利害が衝突して数ヶ月を経てもなにも決まらず、「会議は踊る、されど進まず」と皮肉られた。
 今でもそれは変わらない。核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書案に盛り込まれるはずの「被爆地の広島、長崎への訪問を世界の指導者に促す」という文言が、支那中国の水面下の交渉で没になった。これは一重にNPTに出席している外務官僚の無能さゆえのことである。その他にも「核兵器禁止条約」の盛り込まれないことになり、なんのための再検討会議なのか、まったくわからない。まさに「会議は踊っておしまい」となった。「国連気候変動枠組条約締約国会議」にしても、なにを決めているのか、見えてこない。21世紀に入ってどんどんと混沌としているような気がする。
 佐藤優『「知」の読書術』(集英社)を読んでいる。この第一章が《「世界大戦」は終わっていない》である。
 佐藤さんのその話をざっとひっくるめると……1914年に勃発した第一次世界大戦と1945年に終わった第二次世界大戦は、中だるみの戦間期をはさんだ一つの戦争、二つの世界大戦を区別せず、20世紀に起こった「31年戦争」と捉える……というものである。
 そして、その大戦を引き起こした原因の「国民国家」と「民族自決」というドグマ、あるいは国内においての「資本主義」、外に向かっての「帝国主義」は、日本とドイツが連合国に降伏して解消されたかというと、そんなことはないですよね。
 だから相変わらず「会議は踊る」し、支那中国、ロシア、アメリカの横暴は続いているのである。100年前に始まった戦争はいまだに継続中である、そう佐藤さんは言っている。