昨日、鎌田實さんの講演を聴いた。『がんばらない』の著者で、長野県を長寿県にした仕掛人として有名ですよね。
1200人のホールが7割くらい埋まった。平日の午前中だからまずまずの入りと言っていい。
以下に、鎌田さんの発言を記す。
「生きているとつまずくのよ」
ご自身が、実の両親に捨てられたこと、育ての親が貧乏だったこと、義父は忙しく、義母は長期に入院して孤独だったこと、近所の人の善意にすがるようにして子供時代を生き抜いたこと、そういったことを総括して、そう言われた。
実際に鎌田さんは、このシーズンにスキーで転倒し、左腕を骨折されていて、そのことを自虐ネタにした。
「ずっとつまずいてきたから、このくらいのつまずきはどうってことない」
会場大爆笑。
「イチローだって、8000回の失敗があったから4000本の安打が打てた」
そのとおり。
その後、会場の意識を高めるためにこんな質問をする。
「『ためしてガッテン』を見ている人?」
半分くらい手が挙がっただろうか。こういった聴衆を参加させる手法は講演の常道だ。「割合多いね」と感心してみせ、笑いを取る。
「でも、見ているだけではダメ、行動変容を起こさないと。自分の生活を変えてみることが重要」
ここは、後半への布石となっている。
それから「長寿」の話に移る。
「大正時代の食事に戻そうと唱える医者もいるけれど、大正時代は平均寿命が43歳。今の長寿は栄養がいき渡ったことで達成できた」
「だらしのないベジタリアンがいい。野菜を中心に食事をするが、ときには美味しいものを食べる。それでいい」
「酸化が大敵なので、野菜、青魚、オメガ3の油を意識して摂る」
「デザイナーズフーズは、キャベツ、生姜、ニンニク」
その他には大豆、ニンジン、セロリなどがいいらしい。
「長寿県は高齢者の就業率が高い。生きがいを持つことが大事」
「生き方上手の人は、ホッとする時間をうまくつくる。どんなに忙しくても一服する時間が大切だ」
長寿の話で老人主体の会場は、鎌田さんの話に引きつけられて、ここまでくれば気持ちが離れていくことはない。そこまで下ごしらえをして、そろそろ鎌田さんが言いたい本論に入っていく。
「99%は自分のために使っていい。ただ1%だけは人のために使うことが大切。皆さんが1%だけ社会貢献をすれば、自分のためにもなるし、地域のためにもなる」
実際に、シリアなどで難民救済に尽力しておられる鎌田さんの言葉だから説得力がある。
「ほんのちょっと手を差し伸べれば、人は良くなる」
「ちょっとした声掛けで人は変わる」
「後藤健二さんに救われたイラク人がいる。それがきっかけとなって生き方が変わって、今は命を救う現場で頑張っている」
「あなたを必要としている人が、ところが必ずある。だから、ほんの少しでいいから生き方を変えよう」
そんな話だったような気がする。