ライブはおもしろい

 日曜日に、中日劇場の「四月花形歌舞伎」の夜の部に行ってきた。演目は「新・八犬伝」である。原作は滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」にあるわけだが、すこし体裁が変わっている。原作の悪は「玉梓が怨霊」だが、「新・八犬伝」では、魔界の大天狗の崇徳院となっている。それでも、玉が飛び散って正義の八犬士となり、その剣士たちがそれぞれ「仁義礼智忠信孝悌」の不思議の玉を手に入れて、水滸伝のように一人また一人と結集し全員がそろったところで悪を滅ぼす。この展開は映画ともテレビとも共通なので、何も知らずに舞台を観ても、楽しめることは請け合いですぞ。
 さて、今回も中村米吉
http://matome.naver.jp/odai/2140309970642703401
中村梅丸
http://matome.naver.jp/odai/2141693150494279801
が活躍している。
 米吉が「伏姫」を、梅丸が「濱路」を可愛らしく演じていて、目が離せません。
 メインは片岡愛之助で、彼が「崇徳院」「扇谷定正」「綱干左母次郎」「犬飼現八」の四役を相つとめ候。その他に市川右近市川門之助坂東秀調などが脇を固める。
 そうそうイケメンとしてテレビにもよく出る中村隼人
http://talent.yahoo.co.jp/pf/detail/pp350903
が大爆笑をさせてくれた。
 大詰、大団円である。各地から集まってきた八犬士と大天狗の崇徳院が最後の決戦をするのだが、崇徳院の妖力は絶大で犬士たちはくるくると回転させられるのだった。この時、隼人が張りきった。若いんだからと、右近の倍ぐらいのスピードで回転した。
 そこに伏姫が現われ「不思議の玉をもちいよ」と八犬士にアドバイスする。「おおその手があったのか」って、ふところからソフトボールよりひとまわり大きいくらいの緑色に輝く玉を取り出したって、最初から気が付けよ。
 下手から上手までずらりと八犬士が勢ぞろいし、その奥に崇徳院が大見得を切っている。八つの玉が燦然と輝き、崇徳院は力尽きていく……燦然と輝く八つの玉が……ひいふうみいよ……いつむうなな……なななな……なんと玉が七つしかない。輝く玉が七つしか……。
 あ!隼人ちゃん、あんた玉もってないじゃん。七人の犬士が右手に輝く玉を掲げているのに、あんた空手じゃぁないの。玉が揃わなければ大天狗には勝てまへんで。
 双眼鏡で舞台上を見渡すと、なんと隼人の上手側1mくらいのところに黒い玉が落ちている。あれだ。
 黒子がいるんだから誰か拾って渡せばいいのに。隼人ちゃん、黒子に嫌われているのだろうか。
 勘三郎なら「おっといけねい、男のくせに玉を落っことしちまった」とか言いながら拾っちゃったんだろうね。
でも、こういったアクシデントも含めて、歌舞伎はおもしろいのである。