鉄は熱いうちにちやほやされるとモノにならない

 TBSの「今、この顔がスゴい!」
http://www.tbs.co.jp/imakonokao/
という番組に、歌舞伎役者の中村隼人が出ていた。今、旬の芸能人や有名人にスポットを当てるバラエティである。
 若手の歌舞伎役者に注目をしてもらえるというのは、歌舞伎ファンとしてはありがたい。中村隼人の舞台は一回だけ見たことがあるが、将来楽しみな役者である。萬屋錦之介の甥である二代目中村錦之助の長男、中村獅童とも縁続きになる、梨園の系統としては申し分ない。まだ19歳、ゆっくりと大成してほしいと思っている。
 最近では、『VOGUE JAPAN』4月号
http://www.vogue.co.jp/fashion/news/2013-02/27/japan
のグラビアを飾ったことで話題になった。しかし、この企画がいただけない。隼人のいいところが出ていないのだ。白粉を塗って、眉を引き、紅を差したまではいい。黒い衣装、町娘風の髷もそれなりである。だが頬にそえた手がいけない。手に白粉を塗っていないので、男の手そのものになって画面に表れている。スタイリストだかカメラマンだかは知らないがそこまで気を配らなきゃ。というか、隼人本人がそれを言わなければいけない。タレントじゃないんだ、歌舞伎俳優なのだから。

「今、この顔がスゴい!」に戻ろう。
 ゲスト、この場合は隼人なのだが、彼が登場すると、待ち受ける芸能人たちが、褒めそやす褒めそやす。
「かっこいい」「イケメン」「いい男」などなどありとあらゆる賛美を投げかける。19歳の隼人にしてみれば、そういった評価はうれしい。まんざらでもない顔を見せながらスタジオのセンターに進む。確かに、細長い顔を持った今どきの色男である。すらっとしているし、服装のセンスもいい。
 そこでVTRに切り替わる。べた褒めのとどめを専門家がするのである。
 いやー、ご縁と言うものは不思議なものですな。この間、4月23日の日記
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20130423
で初めて、作家の岩下尚史氏のことを書いたのだが、それから10日あまりでご尊顔を拝することができるとは(笑)。そのべた褒め専門家の役回りが岩下氏だった。
 スーツに蝶ネクタイという出で立ち、軽〜いノリで隼人をヨイショしていた。初めて動くヨイショ岩下を見たので、ちょいと感激しましたぞ。

 さて、中村隼人である。基本的にこの人の顔は歌舞伎顔ではない。面長で、やや顎が伸びている。この面差しで女形をやろうとすると少し無理がある。たとえば玉三郎福助のたまご型の顔を思ってもらえばいい。玉三郎の形状、それが理想である。『VOGUE JAPAN』の写真を見てもらっても判るように、頬骨が目立ちすぎる。顔全体の大きさ(長さ)に比べ、目が小さい。反対に鼻は大きい。普通のタレントとしてならば、充分にいい男だと思うが……。
 もう一つ、言わせてもらうと、19歳にしては表情が固まり過ぎている。海老蔵菊之助獅童などなど、スターとなっていく俳優たちの20歳前後はもっと粗々としていた。40代でも洟ったれといわれる世界である。20歳などまだよだれ掛けが取れない世代だ。ヨイショにうつつをぬかす暇があったら精進精進、それがあなたのためにもなるし、延いては歌舞伎界のためにもなる。

 中村隼人丈、がんばってね。