犬身kensin

 日垣さんhttp://www.gfighter.com/
が12月10日のメルマガで推薦していた松浦理英子『犬身』(朝日新聞社)を読了した。「あの人の犬になりたい。」というちょこっとドキッとする帯に引かれて読み始めた。500ページほどの厚めの本だったが一気に読んでしまった。この本で「愛媛県が犬の形をしている」ということを初めて知ったぞなもし(因みに愛知県はブルドッグが西向きに走っている形をしているぎゃぁ)。
 犬になる女が八束房恵、その犬の飼い主になるのが玉石梓というから、名前の類似性から「南総里見八犬伝」を念頭において読み始めた。「八犬伝」では伏姫の飼犬が八房、敵の怨霊が玉梓でしょ。だから玉石梓がいつ怨霊になるのか、八犬士はいつ登場するのかとわくわくしていたら、見事に心地よく裏切られてしまった。
 この物語にはもう一人重要な人物が登場する。バー「天狼」のマスター朱尾献だ。実に妖しげな人物で、終始、主人公に干渉しつづける。このあたりも読みどころ。
 また梓の母、兄も際立って個性的なヤツらで、ここまでキャラの立った登場人物も珍しい。その他の脇役も曲者ばかりで、全編目が離せなかったのじゃ。犬に関する薀蓄もあちこちに鏤められておりますぞ。あ〜面白かった。