辻村寿三郎展

 安城市歴史博物館で「特別展 人形師 辻村寿三郎」が始まった。もちろん行きましたがな〜。
http://ansyobunka.jp/rekihaku/exhibition/index-exhibition.html
 皆さんご覧になりませんでしたか、NHKの人形劇で「新八犬伝」とか「真田十勇士」がやっていましたよね。あの人形作家が辻村寿三郎さんで、その作品が――数え方にもよって多少前後するかもしれないが――140点余居並ぶ。これは圧巻である。チラシ
http://ansyobunka.jp/rekihaku/exhibition/pdf/jusaburo.pdf
には、「新八犬伝」の「伏姫」、「真田十勇士」の「真田幸村」、「平家物語縁起」の「熱病の清盛」が登場しているが、ワシャ的には、それよりも妖怪、狂乱に陥った人間などに名作が多いと感じた。
 例えば、最も魅せられたのが「狂乱の桐壷」だった。「源氏物語」に材をとり、まわりから嫉妬やいじめにあい徐々に精神的に追い詰められていく桐壷が髪を振り乱してそこに立っていた。すごい情念がガラス越しに伝わってくる。この人形が人形遣いの手によって動き出したら……いやいや人形遣いの手によらずとも動き出しそうなリアルをまとっていた。凄い。
 泉鏡花の「夜叉が池」の「白雪」もいい。龍の化身なのだが、その毅然とした表情はいかばかりであろうか。
 大妖怪の「平将門」「藤原純友」、清盛に祟る「六波羅もののけ」もおどろおどろしくて……。「血染めの崇徳上皇」も鬼気迫るものがまとわりついている。
 そしてなんといっても「新八犬伝」の「玉梓の怨霊」。記憶にないですか?登場するときに必ず言う「我こそは玉梓が怨霊〜〜〜」というセリフ。現在は残念ながら首(かしら)というか面しか残っていないけれど、これが怖いというよりも悲しみをたたえた、やや疲れた女の顔になっている。これは意外な発見だった。「玉梓の怨霊」は悲しさを表す人形だったのか。
 その他にも始めてみる人形も多く、教王護国寺の展覧会に出品した作品群がおもしろい。どちらかというとコミカルに作られた仏様たちがかわいいのだ。どの仏様も胴長短足で、ふつう菩薩様はすらりとして足も長いのだけれど、日光菩薩月光菩薩も四分の一しか足がない。これがとても個性的で愛嬌があるのである。
 この展示会、絶対に行って損はない。できれば「八犬伝」、「平家物語」、「真田幸村」などに詳しい人と行くと楽しいと思いますよ。