バカ殿

 ちょうど今の季節の物語である。
《冬の名残の、厳しい寒さが三日ほどつづいて、雪から雨になり、その雨が上がった翌日からは、暖かく柔らいだ光が江戸の町々を包んだ。》
鬼平犯科帳』13巻にある「春雪」の書き出し。この話は、テレビドラマにもなっていて、今週の始めにBSで放送された。テレビ版は、松本幸四郎の第7シリーズ「木の実鳥の宗八」と解題されているが同じ話である。
主人公は掏摸の名人「木の実鳥」の別名をもつ宗八という老人。ちなみに「木の実鳥」とは「木の実採り」のことで、木の実を採る「猿」のこと。猿のようにすばしっこいところからこの異名がつけられた。
 物語は宗八が、深川八幡宮の境内で、もう一人の主人公である旗本の宮口伊織(旗本)から札入れを掏るするところから始まる。これが事件のきっかけになっていくのだが、この旗本の殿様(高橋長英)がある人にそっくりだったので、大爆笑をしてしまった。金持ち旗本のボンボンで、苦労を知らず、口先ばかりで、人の悪意に軽々とのせられてしまう。自分が仕切っているようで、全体像がまるっきり判っていない。
鳩山由紀夫さんのようだ」
 そう思ったのである。
 結局、軽薄がゆえに盗賊団の一味と行動を共にし、寸でのところで鬼平が収拾してめでたしめでたしとあいなる。
 ドラマの最後で、旗本として同僚の長谷川平蔵は、無言のまま宮口伊織の前に脇差を置くのだった。
「武士としての責任をとれ」
 という暗示である。その後、宮口が腹を切ったかどうかはドラマに描かれていない。しかし平成の殿様は、まったく責任をとる様子もなく、世界中を走り回って害毒を垂れ流し続けている。困ったものだ。

 宮城県大衡村(おおひらむら)が脚光を浴びている。このニュース「セクハラ問題で不信任、議会解散
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150319-00000081-jij-pol
を読むまではまったく知らなかった。テメエのセクハラ問題で、議会を解散するんだ……。平成27年度の予算が成立していないにも関わらず。
 そんでもって、風向きが怪しくなってくると、とっとと辞表を出しでしまった。なにを考えているのだろう。まぁ己のビジュアルも考えずに、パワハラ、セクハラを部下に仕掛けるような阿呆だから、なにも考えていないのだろう。
 でもね、ある意味、この村長
http://www.village.ohira.miyagi.jp/02sonsei/01yakuba/01sontyo/
のおかげで大衡村は全国区になったわけだ。それにしてもあらためて認識したのは、5000人程度の村にも議会があり、行政組織が動いているんだということである。大衡村の周辺は、財政規模の小さい町村が細かく並んでいる。平成の大合併でもくっつかなかったんだね。
 ワシャは、自治体の規模は30万人前後が適正だと思っている。そのくらいが住民からの距離もよく、行政組織上も一番効率的に動くことのできる大きさだろう。
 いくらなんでも5000は小さすぎるし、小さいから一族支配のような不様な形態が長く続くことにもなりかねない。
 前の例も含めてとんでもないトップをいただくと下々のものは苦労するということですな。

 もう一つ、バカ殿の話があるんだけど、時間がないのでまた今度。