国民作家の司馬さんが彼岸へ行かれて19年が経った。時が過ぎるのは早い。
司馬さんの名言からいくつかを。
《たいていの技能は、いくら片手間の習得でも三十年もやっておれば、立派に専門家になる。(中略)要はサラリーマン個々が、人生に緊張感をもつかもたぬかで決まろう。毎月の月給を三百六十回ノンベンダラリと貰っただけで人生の活動期を終える人物なら、何とも申しようがないが、もし成すあろうとするならば三十年の歳月は、十分に人間を育てうる。》
《テレビはイマジネーションを画面にしてくれますから空想力は落ちますよ。活字に刺激してもらうことによってしか、人間は人間らしくなりませんよ。》
《私は、残念ながら愛書家、好事家、収集家、骨董好きのたぐいの人間ではない。
本と私との関係は、読むだけのことで、それも新聞を読むようにして本を読んできた。目的は日本とはなにかを知りたかっただけのことである。》
《酔生夢死。為(成)すこともなくこの世を生き、そして死んでゆく、その覚悟だけはできている。この覚悟のないやつは、大した男ではない》
《不遇を憤るような、その程度の未熟さではとうてい人物とはいえぬ》
《人間の行動を決定する要素として、欲望、理性、気概の三つがある。水がのみたいとおもえば、のむ。これが欲望の行動である。しかし、水に毒が入っているとわかれば、のまない。これが理性の行動である。だが、毒が入っていても、人間としての誇りを失わないために、飲むこともありうる。これが気概の行動である。》