地方のかたち

 年が改まるというのはいい。生きていくための結節点になっていくからね。
ついていない年というものはあって、やることなすことがことごとく裏目に出る、そんな一年だった。それでも自分の周辺は比較的落ち着いていて、好天に恵まれた冬日の縁側のように穏やかではあった。それでまずよしとしよう。

 今朝の朝刊の地方版の片隅にこんな記事があった。豊田市役所でのことである。41歳の無職の男が生活保護の窓口でガソリンのような液体をかぶり、ライターで火をつけようとした疑いで逮捕されたのだそうな。この容疑者、今月から生活保護が停止されており、再支給を求めて脅しにきたらしい。
 おそらくこの男、ガソリンに火をつける気はまったくなかっただろうね。最初から死ぬ気なら周囲にいた人間には止められない。ライターを擦った瞬間に爆発し、男は火柱になる。そこまでの決意をしているようには見えなかったのだろう。《応対した男性職員が田原容疑者を取り押さえ、けが人はなかった。》と記事は結んでいる。
 ガソリン男を押さえ込んだ豊田市の職員は敢闘賞ものだ。

 そういえば、風の噂なんだけど、生活保護の窓口の担当になって体調を崩す自治体職員が多いと聞く。このガソリン男をふくめまともじゃない連中が少なからず紛れ込んでいて、こいつらが職員の精神を蝕んでいくのだ。お恵みにあずかることを当然の権利だと勘違いしている昨今の風潮は、あるいは日本のよき伝統を根底から揺るがせかねないと思っている。
 月始めには生活保護の窓口に金を求めて人々がごった返す。これが健全な社会保障のかたちなのだろうかといつ見ても考え込んでしまうのじゃ。