ワシャは常に扇子を愛用している。大して高いものなんかは持っちゃぁいねえ。安物を何本か使いまわしているのさ。最近、気にいって扇いでいるのは、このあいだ歌舞伎座で買った代物でね、浅黄(うすき)色の地に「暫」の鎌倉権五郎のイラストが入っている。こいつがなかなか使い勝手がいい。
夏ばかりじゃない。冬のさなかにも扇子は手放せない。暖房が利きすぎている場所、人いきれでむんむんの満員電車の中などで、涼をとるのにけっこう役立つ。
6月に入っても、西にむいたワシャの書庫は寒い。寒いわけはないか(笑)。でもね、梅雨寒とでも言うのだろうか、早朝には足元がひんやりすることもあって、一度だけ電気ヒーターを点けた。だから、ワシャにとっては夏の炉、冬の扇はあり得るのである。