出番はいつかくる

 6月22日の「ワンダフルライフ」
http://www.fujitv.co.jp/wonderful-life/
という番組がよかった。リリー・フランキーさんがメインをつとめ、ゲストは阿川佐和子さんである。自然体で生きる二人の対談だったので、まったく力みがなく、ついつい引き込まれてしまった。阿川さんは言う。
「私は何者なんだ、何屋なんだ…原稿もちょっと書きます、親の七光りでテレビに出ました、『で、何やりたいの?』っていうと、『いや、別に〜』って感じ。『1つくらい専門を持ちなさい』って、色んな人が言うんですよ。親も言ってましたけど。『この問題に関しては、阿川佐和子の右に出る者はいないっていう人間になったら、必ず強みになる』って言われて。なるほどね〜って思ったけど、大変そうだなと思って、それもできない。じゃあ何もやらないかっていうと、『ちょっと映画出ませんか?』って言われると『えっ、私が? できませんけど〜、やりましょうか。』っていう風にして、『小説書いてみない?』『いや〜、できないと思うけど…ちょっとやってみようかな。』っていう風にして、積み重ねてきた人生だったから、『お前は何屋だ』っていわれた時に、何の能力もないって思って…今だって多少思ってますよ。父からは、専門をひとつつくれ、と言われましたが、結局、なんの得意もつくれずに……」
 エッセイストなのか、小説家なのか、あるいは司会者なのか、女優なのか、どれもが中途半端だと自嘲ぎみに言われるが、とんでもないとんでもない。
 この点については、リリーさんも、イラストレーター、ミュージシャン、構成作家、ラジオナビゲーターなど多方面で活躍しているかたで、「僕も小説家からは俳優のくせに……と言われ、俳優からは小説家のくせに……って言われる」と笑って答える。
 その道の専門家たちから、門外漢のように言われるお二人だが、お二人ともにこだわりはなく、どの道についてもプロフェッショナルになる気はないという。ワシャのような凡人から言わせてもらえば、どの分野でもプロの仕事をしておられると思うんですけど……。

 阿川さんにもリリーさんにも仕事をするための強烈なモチベーションがあるようには思えない。どちらかというと「夏炉冬扇」というか「昼行燈」というか、そういった生き方のゆるさのようなものを感じる。それがとても素敵だった。
「夏のいろりと冬の扇子」は、一見、どちらもその季節に必要のなさそうに見える。一見すると不要だが、季節が巡れば、状況が変われば、役に立つ時がくる。視点をずらせば、使い方を考えれば、なくてはならないものになる。
「人生に無駄なことなんかないし、この社会にまったく不要な人間などいない」
 二人は、ゆる〜く、そんなようなことを言われていたような気がする。