昨日、急遽、上京する。目的は六月大歌舞伎である。ただし、本日が営業日なので、泣く泣く日帰り(ビエ〜ン)。
昼の部の演目は「お国山三 春霞歌舞伎草子」、「実盛物語」、「大石最後の一日」、「お祭り」。大看板は、菊五郎、幸四郎、仁左衛門など。
上から目線の「歌舞伎見巧者」の大先生に言わせると、團十郎、勘三郎、先の猿之助などが抜けても下から続々と若手役者が上がって来るから大丈夫なのだそうだが、菊五郎にしても幸四郎にしても72歳である。幸四郎などは声が出ておらず、前から8列目でも聴き取りにくかった。仁左衛門の兄である我當なぞ80歳に近い。だからなんだか呂律が回っていなかったなぁ。
それでも収穫は菊五郎だった。まだ團十郎、先の猿之助らが健在だった頃、菊五郎は草臥れているように見えた。少し老け込んでいたように思う。ところが最近の菊五郎には艶が出てきた。「実盛」を演じても意気揚々としていたし、笑わすところもしっかりと観客をつかんでいる。
仁左衛門もそうだ。「お祭り」の「鳶頭松吉」も若々しく、大向こうから「待ってました!」が掛かると「待っていたとはありがてぇ」と切り返す声も張りのあるいい声だった。
中堅どころがごっそりといないわけだけれども、若手にはいいのが揃ってきた。ワシャが注目しているのは、中村歌六の息子の「米吉」である。「お国山三」で女歌舞伎の「阿松」を演じたが、これが上手い。顔も丸く背もないので小柄なかわいい娘に成りおおせている。若手女形の中でももっとも注目株だと思う。
昼の部を見終って、今度は新橋演舞場に行く。「熱海五郎一座」が来ているのである。ゲストスタートして沢口靖子が出ているんですね。これは観なくっちゃ(笑)、ということで歌舞伎座から歩きましたがな。
晴海通りの日差しは強い。ただ午後4時に近いので、南側の歩道は日陰になっている。湿度が低いせいだろう。風が爽快だ。晴海通りを万年橋まで行って、首都高沿いを南西に進む。新橋演舞場の手前にある采女橋公園は鬱蒼として、多くの人が涼を求めて集まっている。かわいそうにホームレスのオッチャンは一般の人たちに押し出される格好で、日の当たる采女橋のたもとのベンチで横になっていた。
いやー久ぶりの新橋演舞場だ。ここも正面玄関周辺が日陰になっていて、とても快適な空間である。だから、4時開場を待つお客さんたちがあふれかえっていた。
ワシャは早速、当日券を求めるため券売所に並んだ。歌舞伎座では3等席は完売だったが、新橋演舞場には3等席に若干の空席があった。ありがたし。もちろんそれをゲットする。席だけ確保し、その後、近くのコンビニで演舞場の中で食べる軽食を求める。おにぎりとサンドイッチ程度でいい。観劇の合間にちょこちょこっとつまむだけだから。
再び、新橋演舞場にもどって購入したチケットを出そうとしたら、チケットを入れておいたパスポートケース(財布)が見当たらない。およよ、キャスターバッグをひっくり返してみたが、どこにもありまへん。
「コンビニだ!」
あわててコンビニに引き返し、レジのニーちゃんに「財布忘れました」と言ったら、やっぱりワシャのブルーのパスポートケースを出してくれた。よかった。中身の50万円(笑)もキャッシュカードも免許類もみな無事だったわい。日本でよかった。
「熱海五郎一座」については明日にでも。