ミミズの必死

 梅雨に入った。雨でもカッパを着て自転車で走り回っている。昨日、昼過ぎのこと、2mほどの自転車道を本社ビルに急いでいた。走行レーンの左右は植え込みになっていて、今の時期は立ちの低い雑草が生えている。
 雨の中を走っていると、前方に道を垂直に横切るものがあった。よく見れば30センチはあろうかという太くて大きなミミズである。ワシャの進行方向にむかって左の草むらから反対側の草ばえまでの2mを、必死に体節を伸び縮みさせて前進している。意外にスピード感がある。
 ワシャはかろうじて伸びきったミミズを避けて通り抜けたが、自転車が頻繁に行きかう自転車道はミミズにとって危険極まりない。でも、ミミズが急いでいるのは自転車に轢かれることを恐れているわけではないんですね。そもそもミミズは自転車を知らないし、見えないし……。それよりも、怖いのは鳥でしょうね。身を隠すもののないアスファルト上でミミズは目立つ。カラスなんぞに見つかったらお陀仏なのだ。その生存本能でミミズは必死に蠕動運動をしているのだった。
 ううむ、それにしても太いミミズの胴の蠕動は生々しく、生きているんだ、一個の生命体なんだと思わされる。地球レベルでいえば、ワシャの命もミミズの命も大差ないんだなぁ。そんなことを思いつつ、自転車道の先を急いだ。
 その先で中学生の自転車の一団とすれ違った。およよ、この集団はさっきのミミズにとって脅威となるだろう。おそらく観察力の未熟な中学生は路上のミミズに気がつくまい。あるいは気がついて、あえて踏んでしまうということも考えられる。必死のミミズ君の運命やいかに。

 所用を済ませた復路、さっきのミミズを目撃したところに差し掛かる。そこで、路肩に輪になったまま動かないミミズの死骸を見つけた。無残なるかな、やはりミミズは自転車道大横断の冒険を果たせなかった。生存競争は厳しい。
(下にも駄文あります)