城について

 昨日、江戸城のことを書いた。江戸城はもちろん将軍の城なので、天下にその権威を広く示すためにもその規模は大きくしなければならない。とはいえ当初に出来上がったのは、本丸と西の丸だけで、その広さは大坂城の本丸と二の丸と同規模だった。そこから考えれば突出して豪壮な城だったということも言えまい。
 ただ、天守櫓は別格だった。昨日、ご紹介した『歴史の名城シリーズ⑦江戸城』(学研)に安土城大坂城江戸城の三天守(安土については「天守」ではなく「天主」と表記する)の比較イラストが並べて描いてある。規模、外観などは、安土桃山時代に造られた安土と大坂は規模、外観ともによく似ている。この二つ、見た目が黒っぽい。それは外壁に黒漆の板張りであったためである。反対に江戸城、姫路城など関ヶ原以降に造られた城は、防火に優れた白漆喰が奨励されたために白い城が多くなったというわけ。
 見た目はともかくその天守櫓の規模である。ざっと見た目でも2倍はあろうかという大きさが江戸城だった。
 城好きには何種類かがあって、天守閣好き、これがけっこう多いと思うけれど、城跡好きなんていう人達もいる。建物より、その遺構、縄張りなどに興味を持っているという連中だ。ワシャはどちらかというと基本的に城跡好きなんですね。
 別に建物が嫌いというわけではない。城を巡れば、天守閣にも登るし、御殿のような建造物が残って入れは、拝見してくるのはもちろんであ〜る。見た目としては、やはり関ケ原以前の黒い城がいいですな。熊本城、松本城松江城丸岡城……そうそう愛媛の大洲城も黒い城系になるのだが、平成16年に再建されている。
 姫路城、現大坂城島原城などの色の白いのは、なんとなく優雅過ぎて好きではない。もう少し戦国の風が感じられる荒々しさが欲しいのである。

 夕べ、 BSで「男はつらいよ」の第19作がやっていた。副題は「寅次郎と殿様」というもので、寅次郎、殿様(嵐寛寿郎)、執事(三木のり平)のからみが極めておもしろい。たとえば殿様のお屋敷で、どこのフーテンだかわからない寅次郎を一刻も早く帰らせようと執事が画策するのだが、そのことが殿様の逆鱗に触れ、床の間の脇差を抜刀すると、執事に斬りかかる。それを寅次郎が押し止め「殿中でござるぞ、殿中でござる」「いいや、武士の情でござる。お放しくだされ」ということになる。笑いに関して全作の中でも珠玉と言ってもいい作品である。
 寅次郎と殿様の出会いの場が、前述した大洲城だった。ただし、映画は昭和52年に撮影されているので、平成16年の再建された天守閣は存在していない。まだ天守閣のない石垣の上で、なけなしの500円札を飛ばして、そこからドラマが始まる。

 久しぶりに「男はつらいよ」を見たけれど、なんだかこのところ忘れていたものを、ふっと思い出させてくれた。自分は、何を汲々として生きていたのだろう。思いどおりにならないこと、独りよがりではなにごとも始まらないことを実感させてくれる。
 いい映画だったなぁ。